尿失禁
尿失禁とは、自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまい、社会的、衛生的に支障を生ずるものです。すなわち、尿失禁は、尿が漏れるのをコントロールできない状態です。
尿失禁は主に高齢者で起こりますが、どの年齢層でも尿失禁は見られます。若い成人のおよそ5人に1人がある程度の尿失禁を経験し、高齢者では3人に1人の割合になります。尿失禁は男性より女性に多く見られます。尿失禁の状態は年齢によって多少異なります。若い成人の場合は突然始まる傾向があり、ほとんど治療しなくてもすぐに治まります。また尿失禁した場合もたいていは、わずかに尿を漏らす程度で抑えることができます。高齢者の尿失禁は頻繁に起こるようになることが多く、程度も激しくなります。また、高齢者での尿失禁はすぐには治まらず、治療しないと治りません。
尿失禁はしばしば孤独感や自信喪失の原因となります。また、介護者の負担が増すという理由で、尿失禁が施設に入るきっかけになることもよくあります。老人ホーム入居者の半数以上に尿失禁が見られます。
尿失禁はよくみられる症状で、たいていは治療が可能で完全に治癒する場合も多いのですが、しばしば診断や治療を受けずに放置されています。尿失禁があっても治療を受けようとしない人が大勢いるのは、普通の老化現象だと誤って思いこんだりしているためです。
尿失禁はさまざまな合併症を引き起こします。尿失禁を適切に処置しないと、膀胱や腎臓の感染につながります。また特に高齢者尿失禁では、尿が皮膚を刺激するために皮膚の発疹や床ずれができやすいです。
当針灸院(鍼灸院)の尿失禁の治療目的は、尿失禁患者にできるかぎりの回復の機会を提供することです。
尿失禁に対して、当針灸院(鍼灸院)は25年間、尿失禁の治療に力を入れて、試行錯誤の末、独自の電気針治療法を開発しました。特殊な鍼と電気の併用でより良い成果を上げています。1990年4月から2008年10月の間、10年間に来院された尿失禁患者の中の500名について、集計したところ、尿失禁患者500名のうち310名が完治、90名が有効、100名が無効となり、有効率は80%でした。
当針灸院(鍼灸院)の治療は尿失禁の頑固さに応じて、多岐に渡って行います。当針灸院(鍼灸院)は中医学的な弁証論治の基本を元に、特殊な電気針治療法を組み合わせることで、最大限の効果を引き出します。
最も興味のある点は針灸治療が尿失禁の再発予防にも効果があることです。治った尿失禁の患者さんの多くがその後再発しませんでした。
腎臓は絶えず尿を作っています。尿は尿管という2本の管を通って膀胱に流れ、そこに一時的にたまります。膀胱の一番下の頸部と呼ばれる部分には、尿道括約筋という筋肉があります。普段はこの筋肉が収縮して、尿を体外に排出する尿道を閉鎖しているため、尿は膀胱がいっぱいになるまで中にたまっていきます。膀胱がいっぱいになると、その情報が神経を通って脊髄に伝わり、さらに脳へと伝達されて、人は尿意を感じます。排尿をコントロールできる人は、すぐに膀胱から尿を出すか、もう少し我慢するかを自分の意志で決めることができます。排尿することに決めると、括約筋が緩み、尿が尿道を通って流れ出てくるのと同時に、膀胱壁の筋肉が収縮して尿を押し出します。腹壁と骨盤の筋肉も収縮して、膀胱への圧力がさらに高まります。年齢に伴って、排尿をコントロールする能力に影響を及ぼす変化が生じます。まず、膀胱にためておける尿の最大量が低下します。尿意を感じてから排尿をこらえる力も、年齢に伴って低下します。尿が膀胱から流れ出て尿道を通過する速さも遅くなります。どんな年齢でも、尿がたまって尿意が生じることと関係なく、膀胱壁の筋肉の散発的な収縮は起こります。若いときは、大半の収縮は脊髄と脳のコントロールで阻止できますが、年齢とともに阻止できない収縮回数が増えていきます。排尿後に膀胱に残る尿量も、年をとると多くなります。女性では更年期に入ってエストロゲン濃度が低下するため、尿道が短くなり、内壁が薄くなります。こうした変化によって、尿道括約筋の力が落ち、ぴったり閉じないようになります。男性では前立腺が肥大し、尿道を通る尿の流れを妨げることがあります。こうした加齢に伴う変化はいずれも尿失禁になる可能性を高めますが、実際に尿失禁になるのは、内臓器官に障害があるといった別の要因がかかわっている場合に限られます。さまざまな障害が原因で、排尿をコントロールする能力が損なわれたり乱されたりします。
女性には骨盤底筋群が膣や子宮、直腸などをハンモック状に吊り上げています。女性の陰部は、尿道口や膣口も含めて男性のそれと比べると筋肉をひき締める力は弱いです。いったん筋肉が緩むと、膀胱や尿道は、お尻のほうへ下がりぎみになります。その結果、尿道の閉まりが悪くなり、尿がもれやすくなります。子宮は膀胱にのしかかるように、膣は尿道に寄り沿うように位置しています。そのため、妊娠や婦人系病気になると、膀胱や尿道が押され、尿失禁をおこす原因の一つになります。
尿失禁は腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性尿失禁、機能性尿失禁4つに分類できます。
尿失禁は、短期間のうちに突然始まる急性の尿失禁と、ゆっくりと徐々に起こる慢性または持続性の尿失禁があります。急性の尿失禁では、膀胱の感染症が最も一般的な原因です。また可逆的な要因、たとえば意識混濁を引き起こす病気や運動障害を引き起こす状態が原因となって尿失禁が起こることがあります。このほか、カフェインを含む飲料やアルコールの過剰摂取、萎縮性腟炎や便秘など膀胱や尿道の炎症を引き起こす状態なども原因となります。持続性の尿失禁は、脳卒中など脳の障害、膀胱に出入りする神経に影響を及ぼす病気、尿路下部の問題、精神機能や体の動きを損なう状態などから起こります。
尿失禁では、問診による症状の詳細や既往歴の把握が重要で、尿失禁の起こる状況や頻度、程度、また尿失禁に関係する既往歴の把握が重要です。尿失禁の病態により尿失禁治療の方法が異なりますので、尿失禁検査による客観的な診断も重要になります。
尿失禁のある人は、少なくとも3日間にわたって尿失禁のパターンを記録するように指導される場合があります。記録は尿失禁の原因を知るために役立ちます。排尿の回数と時刻、排尿をコントロールできたかどうか、失禁したときに漏れる尿の量などを調べます。直腸診では、重度の便秘を起こしているかどうかを確認できます。女性の場合は腟からの内診で、尿道内壁の萎縮や膀胱ヘルニアなど尿失禁に関与している、あるいは実際の原因となっている問題を特定できます。
尿失禁の診断では自分の症状をきちんと話すのが重要です。排尿の問題が生じた経緯、尿失禁が生活の質や日常の生活機能にどの程度影響しているかは適切な治療計画を立案する上で役立ちます。 腹圧性尿失禁の場合は、せきをしたり力んだりしたときに尿が漏れることを確認するだけで診断できます。排尿後に膀胱内に残っている残尿量は、カテーテルという細い管を膀胱に挿入する膀胱カテーテル法や超音波検査によって測定できます。多量の残尿は、尿路の閉塞または神経系や膀胱筋肉の異常を示すもので、溢流性尿失禁の徴候です。尿検査を行って感染の有無を調べます。排尿に関連した各種の特殊検査(ウロダイナミック検査)が有効なケースもあります。圧力変化のパターンが、尿失禁のタイプと治療法を決める上で役立ちます。
尿失禁の治療は尿失禁のタイプと原因によって異なります。
重度の腹圧性尿失禁は、膀胱を上に引き上げ、さらに膀胱の出口や尿道を強くする手術を行って外科的に治します。場合によっては、尿道の周囲にコラーゲンを注入すると効果があります。尿道括約筋がきちんと閉じないケースでは、人工の括約筋で置き換えます。
溢流性尿失禁のうち、前立腺肥大などによる閉塞の場合は、肥大した前立腺の一部または全部を摘出します。
膀胱の筋肉の収縮が弱いために溢流性尿失禁が起こる場合には、薬はあまり役に立ちません。針灸治療が効果的です。
神経因性膀胱とは、脳、脊髄、膀胱を結ぶ神経が損傷を受けたことで、膀胱が正常に機能しなくなった状態です。糖尿病、脳卒中、多発性硬化症などの病気が神経因性膀胱の原因になります。膀胱機能が低下して十分に収縮できなくなる低緊張性膀胱や、膀胱機能が亢進して頻尿や尿漏れが起こる痙性膀胱の状態になります。痙性膀胱は主に脊髄損傷によって起こります。小児の低緊張性膀胱は、主に二分脊椎(骨髄髄膜瘤)が原因で起こります。
低緊張性膀胱では、膀胱は拡張して大きくなっていますが、痛みはありません。膀胱が拡張すると、少量の尿が絶えず漏れる溢流性尿失禁を起こすケースもあります。膀胱の感染を起こしやすくなり、結石ができやすくなります。
痙性膀胱では、自分の意思に関係なく尿が排出され、尿意の程度はさまざまです。膀胱括約筋が閉じているときに膀胱が収縮すると、内圧が高まり、尿が腎臓へ逆流する障害が起こります。
どちらのタイプの神経因性膀胱でも、針灸治療で、完全に回復することはあります。
骨盤の筋肉を鍛える運動など、膀胱の筋肉のトレーニングが非常に有効です。筋肉の収縮法は独力で習得するのは難しいため、バイオフィードバック法がトレーニングによく使われ、看護師や理学療法士から指導を受けます。1日に何度も筋肉を繰り返し収縮させて強くし、せきなど失禁を引き起こす状況で筋肉を適切に使う方法を体で覚えます。
尿失禁の鍼灸(針灸)治療:尿失禁患者500名、男性250名、女性250名。取穴:関元、三陰交、気海、中極、神門、百会、腎兪、命門、足三里。電気針。気海、お臍に間接灸9壮。
尿失禁の鍼灸(針灸)臨床経験:当針灸院(鍼灸院)では、多くの尿失禁患者の症状を回復させてきました。今も多くの尿失禁患者が通っていらっしゃいます。尿失禁患者の一人一人の症状に合わせて、当針灸院(鍼灸院)はきめ細かな針灸治療を行っています。針灸治療の結果、尿失禁患者は正常な生活を送ることができるようになりました。
尿失禁の多くは針灸治療によって完治するか、症状を大幅に軽減することができます。針灸治療の他、尿失禁の患者さんは、膀胱の機能、薬や水分摂取の効果、排尿と排泄習慣などについての指導を受ける必要があります。
尿失禁患者さんの脊髄に電気刺激を加えて、膀胱の支配する神経の働きをよくすると考えられます。
尿失禁患者500名のうち310名が完治、90名が有効、100名が無効となり、有効率は80%でした。
沢田さん、56才、女性、荒川区在住。5年前から度々抑えられない強い尿意が急に起こり、コントロールできずに尿が漏れてしまいます。泌尿器科で切迫性尿失禁と診断され、薬を飲み続けましたが、症状が悪くなるばかりでした。友人の紹介で、当院の針灸治療を受けました。
最初の2回針灸治療だけで、尿漏れが半減し、さらに6回目から、尿意があってもコントロールできるようになり、尿漏れが無くなりました。「5年前からオムツを使ってきましたが、解放されるとは夢にも思わなかった」と大喜びでした。