ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は、腎臓糸球体の病変のため多量の蛋白が尿に出現し、低蛋白血症、浮腫、高脂血症を呈するものです。ネフローゼ症候群の細尿管に蛋白変性、脂肪変性が見られます。ネフローゼはドイツ語で、英語ではネフローシス(nephrosis)といい、いずれもネフロンの病気という意味です。ネフロンは糸球体と尿細管を合わせたもので、ネフローゼとは糸球体から血液中の蛋白質が漏れて、尿に出てしまう病気といえます。
ネフローゼ症候群は糸球体腎炎に続発するものリポイド・ネフローゼとその他の二次性ネフローゼがあります。ネフローゼ症候群を、病理組織型でみると、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、びまん性増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。
一次性ネフローゼ症候群の成人の占める割合は、70〜80%と多数を占めますが、中高年では半数以上が慢性腎症であり、加齢に伴って割合は増加します。最初の発症から5年以内に2回以上の再発率は80%〜90%と高いです。一次性ネフローゼは糸球体にだけ病変を生じます。微小変化型ネフローゼ、膜性腎炎、膜性増殖性腎炎、巣状糸球体硬化症などがあります。二次性ネフローゼは全身の侵される病気における一臓器の症状として糸球体に病変を生じます。二次性ネフローゼ症候群の発症は年齢によって異なるが、小児では紫斑病性腎炎が多く、糖尿病性腎症やループス腎炎は成人の発症が多いです。
ネフローゼ症候群は、体の各所に影響を及ぼすさまざまな病気が原因で生じ、糖尿病、全身性エリテマトーデス、ある種のウイルス感染などが原因としてよくみられます。また、腎炎症候群からも生じます。腎臓に毒性のあるさまざまな薬、特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)もネフローゼ症候群の原因になります。ダニやウルシ科の植物に対するアレルギーなど、ある種のアレルギーが原因の場合もあります。さらに遺伝性のネフローゼ症候群もあります。
ネフローゼ症候群初期症状としては、食欲不振、全身のだるさ(けん怠感)、過度のナトリウムと水分の貯留で起こるまぶたのむくみや組織の腫れ、腹痛、筋肉の萎縮、尿の泡立ちなどがあります。腹腔に多量の体液がたまる腹水で腹部がふくれ、肺の周囲の空間に体液(胸水)がたまって息切れが起こります。このほか膝(ひざ)の腫れや、男性では陰嚢(いんのう)の腫れなどもみられます。ほとんどの場合、組織の腫れを引き起こす体液は重力の影響を受けるため、体のあちこちに移動します。夜間には、体液はまぶたなど体の上部にたまります。日中で座っているときや立っているときには、足首など体の下部にたまります。むくみや腫れがひどくなると、同時に進行している筋肉のやせが隠されてわからなくなります。ネフローゼの場合、腎臓病の中では最も浮腫がひどく、ある朝突然、虫に刺されたように瞼が腫れ、足もパンパンに腫れているというようなことがあります。この場合、浮腫は日ごとにひどくなっていき、胸やお腹の中にまで水がたまるなど、全身におよぶことも少なくないです。これは、多量の蛋白が尿中に排泄されるため、血液の中の蛋白が少なくなり、管の中に水分を引く力が弱まって、血管外の組織に水がたまり、浮腫がおこってきます。
小児では血圧は一般に低く、起立したときに血圧が下がります(起立性低血圧)。ショックが起こることもあります。成人の場合は、低血圧、正常血圧、高血圧とさまざまです。血管から組織に体液が漏れることで循環血漿量が大幅に減少し、腎臓への血液供給量が少なくなると、尿量が低下し腎不全が起こります。尿排出量の低下を伴う腎不全は、突然起こることもあります。
尿に栄養素が出てしまうことから、栄養不足が生じます。小児では発育が妨げられます。骨からカルシウムが失われ、毛髪や爪がもろくなり、毛髪が抜け落ちます。爪の基部に白い横線が現れることがありますが、その理由は不明です。
微小性変化型ネフローゼはアルブミンのみが排泄されるが、その他のタイプは分子量の大きいグロブリンなどの血清蛋白も排泄される。
ネフローゼ症候群は、症状、診察所見、検査所見に基づいて診断されます。24時間にわたって採取した尿の検査は、タンパク質の喪失量を測定するには有用ですが、丸1日かけて尿を集めるのは多くの場合困難です。その代わりに、ランダムに採取した尿を検査して、尿中のクレアチニンに対するタンパク質の比率を測定するという方法があります。血液検査とその他の各種尿検査によって、さらにネフローゼ症候群の特徴がないかを調べます。重要なタンパク質であるアルブミンが尿中に出てしまい、産生が損なわれるため、血中濃度が低下します。また、タンパク質や脂肪と結合した細胞の凝集塊(円柱)が尿に入っていることがよくあります。尿中のナトリウム濃度は低く、カリウム濃度は高くなります。
血液中の脂肪(脂質)の濃度は高値を示し、正常値の10倍以上になることもあります。尿中の脂質の濃度も高くなります。貧血がみられることがあります。血液凝固タンパク質は増加することもあれば、減少することもあります。
薬物を含めて、医師はネフローゼ症候群の原因と思われるものを調べます。尿と血液の検査から、基礎疾患が見つかることがあります。体重減少のみられる人や高齢者の場合は、癌(がん)の検査を行います。腎組織の損傷の原因と程度を判断するには、生検が特に役立ちます。
ネフローゼ症候群の原因、患者の年齢、そして腎臓が受けた損傷の種類と程度によって異なります。小児の場合は約半数で治療によって症状が消えますが、成人では治療効果ははるかに低くなります。基礎疾患がステロイド薬に反応するものであれば、病気の進行が止まることがあり、状態がときには部分的、まれに完全に回復することもあります。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染が原因のネフローゼ症候群は、概して容赦なく進行し、多くの場合3〜4カ月で完全な腎不全になります。先天性のネフローゼ症候群の子供は、その大半が生後1年以内に死亡しますが、透析治療や腎移植で生き延びるケースもあります。
全身性エリテマトーデスや糖尿病が原因であるネフローゼ症候群の場合には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使った治療によって、尿中のタンパク質量が安定または減少することがよくあります。しかし、ACE阻害薬を使った治療が効かず、数年以内に進行性の腎不全になるケースもあります。
感染症、アレルギー、ヘロインの注射などによって起こるネフローゼ症候群の場合、その経過の見通しはさまざまで、原因となっている状態を迅速に、また効果的に治療できるかどうかにかかっています。
エナラプリル、キナプリル、リシノプリルなどACE阻害薬の使用が、ネフローゼ症候群の予防と治療の柱になります。全身性エリトマトーデスや糖尿病などのある人で、軽度または中等度のタンパク尿が認められる場合は、できる限りすみやかにACE阻害薬を使用し、タンパク尿が悪化してネフローゼ症候群になるのを防ぎます。
すでにネフローゼ症候群を発症している人をACE阻害薬で治療すると、症状が改善することがあり、尿に排出されるタンパク質の量が通常は減少し、血液中の脂質濃度も低下することがあります。ただし、中等度から重度の腎不全では、血液中のカリウム濃度が上昇することがあります。
ネフローゼ症候群では、タンパク質とカリウムは普通の量ですが、飽和脂肪とナトリウムを少なくした食事療法を行います。タンパク質を摂取しすぎると、尿中のタンパク質濃度が高くなります。
腹部に体液(腹水)がたまっていると胃の容積が小さくなるため、食事を何回かに分けて少量ずつ取る必要が生じます。可能であれば、原因に応じた特異的な治療を行います。原因となっている感染症を治療することで、ネフローゼ症候群が治癒することもあります。ある種の癌など治療可能な病気が原因の場合には、その病気を治療することでネフローゼ症候群は解消します。ヘロイン常用者がネフローゼ症候群になった場合には、初期段階でヘロインの使用をやめれば回復します。薬の服用が原因の場合には、その薬を中止すれば治ります。ウルシ科の植物、虫刺されなどに敏感な人やアレルギーがある人は、そういったものに触れないようにします。ウルシ科の植物、虫刺されなどによって引き起こされたネフローゼ症候群は、脱感作療法(アレルゲンを定期的に注射し次第にその量を増やしていく治療法)で治ります。治療可能な原因が見つからない場合には、ステロイド薬や免疫系を抑制するシクロホスファミドなどを投与します。しかし、小児にステロイド薬を投与すると、成長を阻害し、性的発達を抑制するなどの問題を引き起こします。
一日に、成人の場合で男性が70g、女性が60gとらなければならないです。現代の日本人の摂取量は平均して75gとみられています。ネフローゼ症候群はいわば濾過装置の故障なので、血液中の蛋白が必要以上に尿の中に排泄されてしまいますので、大切なのは良質の蛋白質をとるということです。アミノ酸にはいろいろあるが、そのうち体内でつくることのできない、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの八種類を必須アミノ酸と呼びます。この必須アミノ酸を多く含んでいる蛋白質が良質な蛋白質といわれるものです。
食塩は野菜など自然の食品にも含まれているほか、ほとんどの調味料に含まれているので、日本人の場合は不足するということはまずないです。厚生省の決めた基準は一日10g以下であるから、健康な人でもまだまだ減塩しなければならないです。食塩の多い食生活を続けていると、血圧上昇作用があります。高血圧は腎臓の機能にも障害を及ぼします。腎臓病の食事療法で食塩制限が必要になるのは、浮腫や高血圧をともなっている場合です。腎臓病の人は高血圧をおこしやすいのでいずれにしても塩分のとり過ぎには気を付けなければならないです。なお、利尿剤を使っていて多尿がみられるときには、多量のナトリウムが排泄されてしまうので、過度の塩分制限にならないように注意します。
治療の基本は、発病期に安静、保温に努め、むくみがひどいときは安静を守るのはもちろんのこと、かぜなどの感染症にかからない注意が大切です。
食事療法は、良質蛋白・高エネルギー食で、食塩制限が原則です。食塩については、むくみの程度によって決め、むくみが高度の場合は、1日2グラム前後、ときには0(無塩)とします。
ネフローゼ症候群の特徴は、大量の蛋白尿、低アルブミン血症(アルブミンという蛋白が低くなる)のほかに、しばしば浮腫、高コレステロール血症をきたす症候群で、いずれも入院治療の対象となりますが、小児では微小変化型が多く、副腎皮質ステロイド薬が有効な場合が80パーセント以上を占めています。しかし、副腎皮質ステロイド薬に反応しないステロイド抵抗性のものや血尿をともなうもの、高血圧をともなうものはほかの病型が多く、腎生検による病型診断を行なって治療法をきめてもらったほうがよいです。薬物療法としては、副腎皮質ステロイド薬や利尿薬の使用がありますが、病態によっては、副腎皮質ステロイド薬が無効な場合があります。
ネフローゼ症候群鍼灸治療症例 :ネフローゼ症候群患者20名、男性15名、女性5名。取穴:腎兪、次髎、大腸兪、京門、命門、足三里、関元、三陰交、気海、中極、内関、章門、陰陵泉。電気針、50分間。気海、お臍に間接灸9壮。
ネフローゼ症候群鍼灸臨床経験 :ネフローゼ症候群は、小児期より成人期にわたって慢性に経過します。その間、再発ないし増悪をくり返す例も多く、安定するまでしっかり鍼灸治療を行う必要があります。ネフローゼ症候群の鍼灸治療の目標は、ある程度の制約はあるにしても、完全寛解ないし軽快安定した状態のもとで就学、就業ができることです。女子の場合は結婚、家事などが可能となり、かつそれにより病態の悪化をみない状態をつくりだすことです。
腎臓糸球体の血液循環をよくし、腎臓糸球体血管を修復すると考えられます。
ネフローゼ症候群患者20名、有効率52%。