歯痛
歯痛は古くから我々人類につきまとう苦悩の一つで、「疲れたな」と感じるとき、いわゆる疲労が歯の痛みを誘うことを、経験的に知っています。疲労の要因となるものには、仕事や家事によるもの、睡眠不足、全身的な病気、栄養失調などがあります。これらはいずれも生活のリズムを乱し、精神的、或いは肉体的な疲労となり、その結果として歯痛が現れることがあります。
歯の表面はエナメル質で、その内側が象牙質、その中に歯髄が入っています。エナメル質は髪の毛や爪と同じで痛みを感じません。また象牙質に神経はありません。しかし、象牙質は象牙細管という文字どおり細い管がたくさん集まってできています。管の中を満たしているのは身体の組織液で、組織液は歯髄と交流しています。この歯髄組織は歯根の先で身体とつながっていて、身体のほうから入り込んでいる神経や血管などで満たされています。この神経が刺激を受けたり、炎症が起きたりすることにより痛みが生じます。歯髄は、身体の中でも特に神経が多く、痛みに対してとても敏感な箇所なのです。
歯の痛みのほとんどが、むし歯が原因です。ほかにも、膿瘍、歯冠を取り囲む歯肉の炎症(歯冠周囲炎)、さらに頻度は少ないですが副鼻腔の炎症(副鼻腔炎)なども歯痛を引き起こします。
ひとりでにズキズキ痛む場合は、急性の歯髄炎や歯根膜炎からあごの骨の炎症に移行するときの痛みで、激しくて夜も眠れぬほどのこともあり、時に頭や耳にまでひびきます。
歯根膜炎では、歯を動かしたり、たたいたとき、かみ合わせたときにも痛みがあります。むし歯も歯根膜炎が進むとなかなか治りにくくなります。
食べものをかんだり、靴ひもを結ぶために上体を倒したりすると起こる上顎歯の痛みは、副鼻腔炎によるものと考えられます。現在あるいは最近かぜをひき、そのときに歯の痛みがあった場合は、副鼻腔炎の可能性があります。副鼻腔炎の場合は、歯痛のほかにも、頭痛、副鼻腔上部の皮膚の腫れ、圧痛などの症状が現れます。
歯痛症状としては「歯が浮いたようだ」「チクチクする」「何となく変だ」などと表現されますが、個人差もかなりあります。同じ痛みでも日によって強弱があり、仕事や家事に追われる日中は忘れていて、疲れが蓄積されてくる夕方から夜間にかけて痛みを増す傾向があります。疲労が体の防衛力を低下させるのと、生物である人間の1日のライフサイクルが痛みに弱い時間帯になるのが理由として考えられます。
歯痛には、感染症や神経損傷をはじめ、さまざまな原因が考えられます。歯痛の原因としては、虫歯や歯周病の他、外傷によるものや、親知らずに関連するもの、顔面の神経炎によるものなどがあげられます。これに較べて、疲労による歯痛はその原因を特定するのが難しく、目に見えないため厄介なものといえます。疲労は痛みを感じ、伝える神経系を過剰に敏感にし、バランスをくずします。体調を維持するためのホルモン分泌を乱し、歯の不快感や痛みを増幅します。また、疲労物質の蓄積は免疫力を低下させ、病原体に対する抵抗力を弱めて細菌性炎症などによる歯痛を起こしやすくします。
もともと痛みは、からだを防衛するための警告とも言われていますが、この痛みも程度を越え、また長引くと、からだに種々の障害を及ぼすことは言うまでもありません。
長期間にわたる頑固な痛みに対して、原因を放置して鎮痛薬に頼ると、痛みを和らげる効果はありますが、それによる副反応が起こる事も忘れてはなりません。頑固な痛みが続いたら、鍼灸治療をお勧めします。
米ミシガン大学ヘルスシステム(アナーバー)は、歯痛の原因として以下のようなものを挙げている:
歯磨きや歯周病で歯茎が下がったり、歯が削れたりすると知覚過敏になってしまうことがあります。虫歯が見当たらないのに冷たいものがしみたり、歯ブラシが当たるとピリッと痛かったりします。
歯の痛みのほとんどが、むし歯が原因です。冷たい水や空気に触れたときだけに歯が痛む場合は、初期のむし歯や歯のすり減ったときが考えられます。歯と歯の間などの隠れた場所に虫歯があったりすることもあります。虫歯は放っておくとどんどん進行してしまいます。
歯の痛みのほとんどが、むし歯が原因です。冷たい水や空気に触れたときだけに歯が痛む場合は、初期のむし歯や歯のすり減ったときが考えられます。歯と歯の間などの隠れた場所に虫歯があったりすることもあります。虫歯は放っておくとどんどん進行してしまいます。原因不明と言われている非定型歯痛ですが、いくつか原因に関する説があります。
精神的ストレス:精神的ストレスを感じると、それに伴って血中のカテコールアミンの量が増加し、そのため歯の周囲の血管が充血して歯痛が引き起こされるという説。非定型歯痛を訴える患者の約半分は、同様にストレスによって生じると考えられているブラキシズム(歯ぎしり)も併発しているということも、この説をより有力なものとする理由の1つです。
神経因性説:原因不明の歯痛を訴える人の多くは、過去に歯の治療を繰り返し受けています。この治療の際に、歯の神経から脳へ痛みを伝える神経伝達が混乱してしまうことにより、原因不明の歯痛(非定型歯痛)が引き起こされるというのが、神経因性説です。この説が、非定型歯痛(特発性歯痛)の原因の最も有力な説となっています。
<非定型歯痛の問題点>
非定型歯痛は原因がよく分からないにも関わらず、患者さんは歯痛を訴えるため、意味の無い神経の治療(根管治療)を繰り返したり、関係の無い歯を抜歯してしまったりということが少なくありません。患者さんは、治療を何回繰り返しても治らない。
また、非定型歯痛(特発性歯痛)に対しては、歯科治療を行うこと自体が症状を悪化させる原因になってしまいかねませんので、痛みの原因が分からない歯に対しては慎重に対応しなければなりません。
非定型歯痛・非定型顔面痛という疾患、実はそれほど珍しい病気ではありません。患者さんは、身体的な治療を受けてこられることが多いのですが、実際は、「痛みの原因は体にあるのではなく、脳の中で生じている」と考えられています。これは、「非定型歯痛」や「非定型顔面痛」を、「疼痛性障害」だとする考え方です。具体的には、脳のセロトニン系神経ネットワークに機能不全が生じ、痛みの感覚がうまく調整できないという状態です。患者さんのほとんどが、三叉神経痛や骨髄炎、歯髄炎などの診断で、テグレトールなどの薬物療法や、神経を抜いたり、抜歯をしたりなどいろいろな手術を受けてきますが、“体”に対する治療では解決しません。むしろ外科的な処置を行うほど、痛みが増悪したり、部位が拡大したりしますので、この疾患では外科処置は避けるべきだとされています。
非定型歯痛(特発性歯痛)に対して歯科治療を行うことは、症状を悪化させるだけであって治療効果はないと考えられています。
原因不明の歯痛である非定型歯痛の治療には、鍼灸の治療が非常に有効な方法とは言えます。
西洋医学では、原因不明の歯痛である非定型歯痛の治療には、三環系抗うつ薬(ドスレピン、アミトリプチリンなど)が投与されます。これらの三環系抗うつ薬の投与によって遊離するノルアドレナリンの量が増え、ノルアドレナリン神経伝達が増強されることによって、症状の改善が期待できます。また、三環系抗うつ薬単独では症状の改善が見られない場合には、抗精神病薬(フェノチアジン)の併用も効果的だと考えられています。抗精神病薬(フェノチアジン)にはドパミン神経伝達の抑制作用があるため、神経回路の混乱を解消させる効果があると考えられています。基本的には三環系抗うつ薬単独で治療し、まず、20-25mgの低用量から使用開始、副作用との兼ね合いをみながら徐々に増量していきます。鎮痛が得られたら、今度は逆に徐々に減量し、中止する。という流れになります。この際、出来るだけ三環系抗うつ薬単独で治療を行い、抗精神病薬との併用は可能な限り後伸ばしにすることが重要です。
針治療で、非定型歯痛が完治しますが、しかし、非定型歯痛(特発性歯痛)の治療は、一度完治したと思ってもまた再発してしまうこともありますので、充分な治療をする必要があります。
歯痛 鍼灸治療症例 :歯痛の患者さん34名、歯髄炎、歯冠周囲炎、非定型歯痛、歯根膜炎、虫歯、知覚過敏などが含まれます。取穴:昆侖、合穀、下関、四白、人中、頬車、太陽。
歯痛鍼灸臨床経験 :
歯痛の治療には、鍼灸の効果がよく、鎮痛時間が長く、しかも消炎効果があって、歯の炎症を根本的に治っていきます。
内服鎮痛薬、注射などで、痛みが治らない歯痛にも、鍼灸で鎮痛効果を発揮できます。歯痛の治療には、合穀、下関の効果がよく、頭痛がある場合、太陽をとると、すぐにも痛みが止まります。
歯痛の患者さん34名、完全鎮痛したのは、28名でした。