統合失調症の鍼灸治療
統合失調症について
統合失調症とは、妄想や幻覚などの多様な症状を示す精神疾患です。
統合失調症は思考・感情・知覚・意欲など精神機能の多くの領域で独特の症状を呈する病気です。統合失調症は脳の組織に肉眼的な異常がないために、原因不明の疾患と思われてきましたが、最近脳の形態やはたらきに異常が次々と見つかっています。現時点では、神経シナプスにおける情報伝達の異常が症状と関係していると考えられています。統合失調症の罹病危険率(一生の間に発病する確率)は約1%、統合失調症の有病率(人口1000人中の病人の割合)は3〜5人です。統合失調症は精神病院の入院患者の60%程度、外来患者の20〜30%を占め、精神疾患のなかで多い病気の1つです。
統合失調症に対する当院の取り組み
北京中医針灸院の統合失調症の治療目的は、統合失調症患者のできるかぎりの回復の機会を提供することと統合失調症の完全な回復までの時間を短縮することです。
統合失調症の治療は、西洋医学以外に東洋医学の針灸治療があります。当院長は統合失調症患者の期待に応えるため、25年間、統合失調症の治療に力を入れて、試行錯誤の末、独自の電気針治療法を開発しました。特殊な鍼と電気の併用で良い成果を上げています。1990年4月から2008年10月の間、当院で鍼灸治療を受けた統合失調症の患者さん340名を集計しましたところ、140名が完治ました。
北京中医針灸院の治療方法は統合失調症の原因に応じて、多岐に渡って行います。当院は中医学的な弁証論治の基本を元に、特殊な電気針治療法を組み合わせることで、最大限の効果を引き出します。そして統合失調症の治癒で、手や腕の麻痺、歩行障害の回復はは患者さんの生活の質を向上させるのに役に立っています。
もう一つ注目すべき点は針灸治療を受けて治った統合失調症患者140名の中、統合失調症の症状は再発した方がいませんでした。針灸治療は統合失調症の再発予防にも効果があることが分かりました。
統合失調症の原因
統合失調症は遺伝的要因と環境要因両方が発症に関与していると考えられています。統合失調症の遺伝形式は不明で、信頼できる原因遺伝子の同定はされていないが、統合失調症の約60%が遺伝によるとの報告があります。しかし明確な原因は未だに確定されておらず、いずれの報告も説の域を出ないです。
- ドーパミンの過剰による統合失調症
中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰が、幻覚や妄想といった陽性症状に関与しているという仮説。実際にドーパミンD2受容体遮断作用をもつ抗精神病薬が陽性症状に有効であること、死後脳研究、陽電子放出断層撮影(PET)などの脳機能画像を用いた研究からも支持されています。
- グルタミン酸受容体の異常による統合失調症
麻酔薬として開発され、のちに精神異常の副作用の為使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状及び陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説です。
- 遺伝的な欠陥による統合失調症
統合失調症患者と対照群の脳内で別々の働きをする49種類の遺伝子の状態を比較した研究では、統合失調症患者に脳細胞間のシグナリングに欠陥が確認され、ドーパミンやミエリンを生成する遺伝子の働きには、統合失調症患者と対照群の間に差異は確認されていないです。
- 発達障害による統合失調症
統合失調症の初発患者において脳の容積が一部低下していたり、死後脳において脳の構造異常が見られたりする例があることから、脳の発達段階での何らかの障害が関与しているとする仮説です。
- 心因による統合失調症
統合失調症の分類
統合失調症の分類はICD-10によります。
- 妄想型統合失調症:妄想・幻覚が症状の中心で、解体した言動が乏しく、統合失調症の中で最も多く、30歳代以降に発症することが多いです。
- 破瓜型統合失調症:思春期前半に統合失調症発症することが多く 解体した思考や行動が主体で、激しい症状がない場合もあります。
- 緊張型統合失調症:興奮・昏迷などの症状が現れます。同じ動作を繰り返します。
- 鑑別不能型統合失調症:一般的な基準を満たしているものの、妄想型統合失調症、破瓜型統合失調症、緊張型統合失調症の亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態です。
- 統合失調症後抑うつ:統合失調症の急性期の後に訪れることが多く、自殺などを招くことがあります。
- 残遺型統合失調症:統合失調症の陰性症状が1年以上持続し、陽性症状はないかあっても弱く、他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態です。
- 単純型統合失調症:統合失調症の陰性症状が強く現れ、陽性症状はほとんど見られなく、破瓜型統合失調症に似ていますが、自我意識の喪失がない点が異なっています。
- 特定不能の統合失調症
統合失調症の症状
統合失調症では思考、知覚、自我意識、意志・欲望、感情など、多彩な精神機能の障害が見られます。大きく陽性症状と陰性症状の二つがあげられ、その他の症状に分けられます。
- 統合失調症の急性期の症状
幻覚・妄想・興奮などの、だれの目にも異常とみえる症状が前面に出てくる時期です。このような症状を陽性症状と呼んでいます。
幻覚としては、幻聴や幻視が多く、特に人の声が聞こえるというタイプの幻聴が多く出現します。聞こえる内容にも特徴があり、「……しなさい」といった命令調のもの、「またあんなことをして」といった批判的なもの、「〇〇さんはいまこんなことをしています」といった実況中継風といった具合です。また第三者どうしが自分のことを論評するといった手の込んだ幻聴も特徴的です。
妄想としては被害的な内容が多く、うわさされる、迫害される、監視されている、盗聴されるといった類です。
感情的に不安定になり、切迫感が強い状態になります。また言語がまとまらなくなったり、興奮や昏迷の状態もよくみられます。食欲が低下し睡眠が障害されて昼夜のリズムが乱れがちになり、周囲とのコミュニケ−ションもうまくいかなくなります。
病状が進むと自分が病気だという意識がもてず、周囲が受診をすすめても受け付けないという状態になることもしばしばあります。
急性期はそれほど長くは続かず、多くは数週間程度です。陽性症状に対しては薬がよく効きますので、この時期は薬物療法が中心になります。また必ずしも入院を要するわけではありません。しかし本人が希望する場合、家族の看護がむずかしくなった場合、症状が重い場合(他人を害したり自殺行為がみられる場合)には入院を考慮します。
- 統合失調症の回復期の症状
陽性症状が徐々に減り、自分を取り戻していく時期です。陽性症状に巻き込まれる度合いも少なくなっていきます。
陽性症状は完全に消える場合から相当程度に残ってしまう場合まで、回復の度合いに大きな差がありますが、初回エピソード(はじめて症状があきらかになったとき)では幻聴が消失する割合が90%程度です。この割合は、再発をくり返すごとに低下するようで、再発の防止が治療上重要になります。
陽性症状が減るとともに陰性症状と呼ばれる症状が目立つようになることがあります。陰性症状とは、感情の鈍麻(喜怒哀楽の表現が乏しくなる)、会話の乏しさ、意欲の低下、引きこもりなどの症状で、一見したところでは異常とはみえないような症状のことをいいます。また回復期にうつ病のような状態になることもあります。
この時期は、薬物療法を続けつつ現実面への接触を進めていきます。
- 統合失調症の安定期の症状
陽性症状・陰性症状ともにある程度固定する段階です。すべての人が慢性期の症状を残すわけではありませんが、だいたい70〜80%の人には症状が残ります。陰性症状が強い場合は、他人とのコミュニケーションや、家事・仕事の能力や、社会資源を利用する力が低下するので、ただちにもとの生活に戻るのがむずかしいのです。このような障害を能力障害といいます。能力障害に対しては薬の効き目は少なく、心理社会的治療(後述)が適応されます。
病気の症状は非常に多彩ですが、症状の組み合わせは大体決まっており、いくつかの病型に分けることができます。
破瓜型[はかがた]と呼ばれる病型は陰性症状が中心で、ときどき陽性症状が活発になって再発をみるタイプです。若年に発症し予後がもっともわるいタイプです。
緊張型と呼ばれるのは、興奮や昏迷の症状が主体で陰性症状は比較的少ない病型です。若年に発症し予後はよいほうです。
妄想型と呼ばれる病型は文字どおり妄想や幻覚が主体で陰性症状は比較的少ないタイプです。30歳前後以降に発病し予後はよいほうです。
発病後、最初の5年くらいは症状が強く出やすい時期で、その後はしだいにおちつき、10年くらいで病状の変化が乏しくなってきます。
職業的に自立できるかどうかは社会状況に規定されますが、最近の群馬大学の調査では自立と半自立を合わせて60%程度でした。
統合失調症の検査と診断
統合失調症では一般に、検査所見による異常はみられず、症状によって診断します。統合失調症の症状が6カ月以上持続することで診断がなされます。統合失調症は以下のようなものがあります。
- 妄想型統合失調症:妄想や幻聴が主体で、人格のまとまりが比較的保たれている統合失調症
- 解体型統合失調症:人格のまとまりのなさが前面に出ている統合失調症
- 緊張型統合失調症:混迷状態、興奮状態などが前面に出ている統合失調症
- 残遺型統合失調症:陰性症状が主体でさらに疎隔化した陽性症状がみられる統合失調症
- 単純型統合失調症:陰性症状主体に進行していく統合失調症
この中で単純型は陽性症状がほとんどなく、陰性症状である社会的引きこもりが徐々に進行していくタイプで、かなり長期にわたって病気と気づかれない場合があります。
統合失調症の予後
統合失調症の長期予後は極めて多様です。約4割の統合失調症患者が元の生活能力を回復し、約4割の統合失調症患者が軽度の残遺症状を持ちつつも生活能力が若干低下する程度に安定し、約2割の患者は中等度から重度の残遺症状を残します。過去に比べ、全体的に予後はかなり向上しているといわれています。病型別に予後を見ると、緊張型統合失調症や妄想型統合失調症では、幻覚妄想などの症状の方が抗精神病薬に反応しやすく、予後がよく、破瓜型統合失調症や単純型統合失調症などの陰性症状には、治療の効果が得られにくいため予後が悪いと一般的に言われています。
統合失調症の鍼灸治療法
統合失調症の鍼灸治療症例と臨床経験
統合失調症の鍼灸治療症例 :統合失調症患者340名。取穴:暈「ウン」聴区、百会、印堂、中脘、中極、足三里、太沖、曲池、合穀、内関、人中、翳風。電気針、50分。
統合失調症の鍼灸臨床経験 :統合失調症の針の電気を強く、筋肉の痙攣があるぐらいです。
統合失調症の鍼灸治療のメカリズム
統合失調症患者は鍼灸治療によって、セロトニンやノルアドレナリンなどモノアミン系の神経伝達物質のはたらきを正常に戻すことができます。
統合失調症の鍼灸治療効果
統合失調症患者340名、完治したのは140名、有効率86%。