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後縦靭帯骨化症

後縦靭帯骨化症の鍼灸治療

後縦靭帯骨化症の原因

後縦靭帯骨化症は、頸椎を支えている後縦靭帯が骨になる病気です。脊柱は椎骨(ついこつ)が積み重なってできていますが、それらの椎骨をつないで支えている組織のひとつに靭帯があります。この靭帯には、椎骨の前側にある「前縦靭帯」と後側にある「後縦靭帯」があります。後縦靭帯は脊柱管に面しているので、この従来軟らかい組織が骨化して硬く大きくなると、脊柱管内にある脊髄を圧迫してさまざまな神経症状を現します。
後縦靭帯骨化は頸椎に多くみられるが、まれに胸椎にもみられます。遺伝的に日本人に多くみらます。現在のところ、靭帯が骨化する機序(仕組み)についての詳細は不明です。国内の一般外来を受診する成人の頚椎側面単純レ線写真からの調査では、1.5%から5.1%平均3%の発見頻度があります。中国の50歳以上でも2.7%の頻度で認められています。従来からアジア地区特に東アジアに多く認められると報告されてきました。しかし最近のアメリカ合衆国内の報告でも1.2%の発見頻度が報告され、この病気の地域偏在性は少なくなってきました。男女比では2:1と男性に多く、胸・腰椎後縦靭帯骨化症は逆に女性に多いといわれます。発症年齢はほとんど40歳以上で、50歳代がもっとも多く、次いで60歳代、40歳代となり、30歳代未満の発症はきわめて稀とされています。後縦靭帯骨化症の全国受診患者数は年間4200名と推定されます。

後縦靭帯骨化症になりますと、脊椎椎体の後縁を上下に連結し、脊柱を縦走する後縦靭帯が骨化し増大する結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて知覚障害や運動障害等の神経障害を引き起こす病気です。骨化する脊椎のレベルによってそれぞれ頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症と呼ばれます。

後縦靭帯骨化症の原因

後縦靭帯骨化症の原因については多方面にわたり研究されています。しかし明らかな原因は不明です。後縦靭帯骨化症に関係するものとして家族内発症があるということ、性ホルモンの異常が存在すること、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、またその部位の椎間板脱出などいろいろな要因が考えられています。特に家族内発症においては遺伝子の研究から有力視されています。

後縦靭帯骨化症の症状

後縦靭帯骨化症は椎体の後面に付着している後縦靭帯が骨化する(骨に変性する)疾患です。骨化して肥大した靭帯が脊髄や神経根を圧迫すると、手や足、体幹の痛み、しびれや運動障害などをきたします。中年期以降に症状があらわれることが多く、また、その他の脊椎の靭帯(黄色靭帯や前縦靭帯)や、脊椎以外(膝や股関節など)の靭帯の骨化を合併していることもあります。

1.初発症状

上肢のしびれや痛みを初発症状とするもの約40%、項頸部のこりや痛みを訴えるもの約34%といわれる。  
下肢のしびれや痛みを初発症状とするもの約16%、下肢の運動障害約13%である。

2.主症状
  1. 項頸部、体幹の症状  
    項頸部のこわばりや傷みのほか、背部の圧迫感を訴える。頸椎の運動制限、頸部屈伸時に背部に走る電撃様疼痛、胸郭運動制限などもみられる。
  2. 上下肢の症状  手指の運動が制限され、身の回りの動作が困難となる。下肢でも運動障害がみられ、進行して最終的には歩行不能となる。
    重症例では振動覚や位置覚も障害される。
    腱反射は上下肢ともに亢進することが多く、Hoffmann反射、Wartenberg反射、膝クローヌス、足クローヌスなどもみられる。
  3. 膀胱直腸障害  
    頻尿、開始遅延、残尿感などを訴える。便秘がしばしばみられる。
  4. その他

本症は肥満の人に多くみられ、耐糖能異常を示すことが知られている。

後縦靭帯骨化症症状、手足のしびれや痛みで発症することが多く、また、手指の運動がうまくできなくなり、箸が持ちにくい、ボタンが掛けにくい、字が書きにくいなどといった症状が出てきます。脚では「痙性歩行」といって、脚が突っ張って歩きにくくなります。さらに症状が進むと、排便・排尿障害も起こることがあります。頚椎にこの病気が起こりますと、最初にでてくる症状として首筋や肩胛骨周辺に痛みやしびれ、また特に手の指先にしびれを感じたりします。次第に上肢の痛みやしびれの範囲が拡がり、下肢のしびれや知覚障害、足が思うように動かない等の運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の運動障害などが出現してきます。重症になると排尿や排便の障害や一人での日常生活が困難となる状態にもなります。胸椎にこの病気が起こりますと上肢症状以外の頚椎の時と同じ症状となります。初発症状として下肢の脱力やしびれ等が多いようです。また腰椎に起こりますと歩行時の下肢の痛みやしびれ、脱力等が出現します。これらの症状は年単位の長い経過をたどり、良くなったり悪くなったしながら次第に神経障害が強くなってきます。慢性進行性のかたちをとるものが多いようです。中には軽い外傷、たとえば転倒して特に頭等強く打たなくても急に手足が動かしづらくなったり、いままでの症状が強くなったりします。

後縦靭帯骨化の発生する部位による症状

  1. 頸椎後縦靭帯骨化症
    後縦靭帯骨化症の最も多く発症する部位が頸椎です。女性よりも男性に多く見られます。上肢、下肢のしびれで始まることが多く、進行すると手先の細かい動作が困難になったり、排尿障害(頻尿や尿が出にくいなど)、歩行障害へと進行していきます。
  2. 胸椎後縦靭帯骨化症
    男性よりも女性に多く見られます。多くは下肢の脱力やしびれで始まります。進行すると排尿障害や歩行困難が出てきます。他の脊椎の靭帯骨化を合併することも多く、この場合は狭窄の程度がひどくなったり、上半身の動きが制限されることがあります。
  3. 腰椎後縦靭帯骨化症
    歩行時の下肢の痛みやしびれ、脱力感が出ます。骨化した部分に外部から衝撃を受けると、急激に症状が悪化することがあります。

後縦靭帯骨化症検査

  1. X線
    頸椎単純撮影画像で、椎体後面に縦走りする骨化像をみることができる。
    しかし、本症は肥満男性に多いため、下位頸椎に骨化病変のある場合は、肩の陰影と重なるため、単純写真だけでは判断できないことがある。このときは矢状面の断層写真かCTスキャンが有効です。頸椎の骨化はC2〜C7が多く、C1とTh1は比較的少ないとされている。骨化の広がりは、2〜4椎体に及ぶことが多いようです。胸椎、腰椎のX線撮影も行い、胸・腰椎の後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の存在の有無を調べておく必要があります。
  2. 感覚や反射・運動機能の検査
    靭帯の骨化はX線検査で診断できますが、詳しくはCTやMRIで確認します。ただ、靭帯骨化があるから必ずそれが神経症状を発しているとは限らないので、詳しく感覚や反射・運動機能の検査をする必要があり、身体所見と画像所見が一致した場合に診断が確定されます。

前縦靱帯骨化症

後縦靭帯骨化症は黄色靭帯骨化症、前縦靭帯骨化症を合併しやすく、骨化部位は縦方向や横方向に増大、伸展していきます。骨化があればすぐに症状が出現するわけではありません。症状のない方は定期的にレ線写真検査をする必要があります。症状が重度になると、日常生活にかなり障害がでてきます。介助を要することもあります。一般に脊髄神経症状は慢性進行性です。また軽微な外力で四肢麻痺になることがありますのでその存在を知っておく必要があります。
前縦靱帯骨化症とは後縦靭帯と対をなす靱帯で脊椎の前方を縦に走る前縦靱帯が骨化した状態を言います。これ自体が単独で症状を来し、治療の対象になることは稀です。わが国ではフォレステイル病とも呼ばれています。また強直性脊椎肥厚症と呼ばれることもあり、この病気との鑑別が困難なことがあります。背骨の運動が障害されることから体が硬くなって動きが悪くなったと訴える人が多いようです。頚椎ではものを飲み込むのが辛くなったという嚥下困難の症状が出現することがあります。また声がかれるといった嗄声を訴えることもあります。胸椎や腰椎では背中の張りや腰痛を訴える方もいますが、特徴的な症状はありません。

黄色靭帯骨化症

黄色靭帯骨化症とは脊柱管の後方にある椎弓の間を結ぶ靭帯、すなわち黄色靭帯が骨化し、脊柱管が狭くなり、神経の圧迫症状が出現してくる病気です。
後縦靭帯骨化症と比べると疫学調査が少ない状態ですが、骨標本からの研究で20歳以上の胸椎下部に殆どに認められています。レ線写真からの調査では約4.5%の発生率を見ています。病気の原因は不明です。後縦靭帯骨化症と合併しやすい事実がありますが、病因ははっきりしていません。胸椎の下位に起こりやすいことは胸椎と腰椎の連結するところに負担がかかりすぎることから起こりやすいとされています。胸椎黄色靭帯骨化症が多いです。初発症状として下肢の脱力やこわばり、しびれまた腰背部痛や下肢痛が出現してきます。痛みがない場合もあります。数百メートル歩くと少し休むといった間歇性跛行を来すこともあります。重症になると歩行困難となり、日常生活に障害を来す状態になります。
 頸椎後縦靭帯骨化症に黄色靭帯骨化症を合併する頻度は約55%といわれ、脊柱管は後縦靭帯骨化症によって前方から、黄色靭帯骨化症によって後方から狭窄を生じ、脊髄や神経根が圧迫され麻痺などの症状を呈することになります。

後縦靭帯骨化症の西洋医学治療

後縦靭帯骨化症治療には保存的治療と手術療法があります。

  1. 保存的治療
    後縦靭帯骨化症骨化によって圧迫されている神経を守ることが治療の主目的になります。頚椎における保存的療法ではまず頚椎の安静保持を保つため、頚椎の外固定装具を寝ている時以外に装着します。この時頚椎は快適な位置にあることが必要です。高さの調節可能な装具がよろしいかと思います。後屈する姿勢は避ける必要があります。2、3週間で症状の軽快を見ます。場合によっては入院して、持続的に頚椎を牽引することもあります。通院しながらの牽引は他の頚椎の病気の時に行うのと比べ効果があがりません。入院管理の下に持続牽引する期間はおよそ一ヶ月程度です。胸椎や腰椎では頚椎よりも牽引療法の効果は少ない傾向にあります。牽引で経過良好な場合は装具療法に切り替え経過観察していきます。その他薬物療法として消炎鎮痛剤、筋弛緩剤等を内服して自覚症状の軽減が得られることがあります。
  2. 手術治療
    後縦靭帯骨化症症状が強い場合は手術治療します。これには神経の圧迫を取るため骨化部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する前方進入法と骨化部位はそのままにして神経の入った脊柱管を拡げる後方進入法があります。胸椎では背骨が丸くなっているため、前方進入法が選ばれますが、難易度の高い手術です。腰椎では後方進入法がよく選ばれます。前方固定を行うと約3カ月の骨がつく期間を要します。

後縦靭帯骨化症鍼灸治療法

後縦靭帯骨化症鍼灸治療症例と臨床経験

後縦靭帯骨化症鍼灸治療症例 :後縦靭帯骨化症16名。上半身取穴:唖門、風池、風府、大椎、肩髃(けんぐ)、天宗、風門、肺兪、後渓、曲池。電気針、20分間後、吸い玉20分間。下半身取穴:両側の腰眼、次髎、大腸兪、腎兪、委中、崑崙。坐骨神経痛の場合は環跳、承扶、陽陵泉を追加。電気針、20分間後、吸い玉20分間。

後縦靭帯骨化症鍼灸治療臨床経験 :後縦靭帯骨化症の鍼灸治療は保存的療法です。特に痛み、痺れには効果的です。後縦靭帯骨化症無理に頸椎部に外力を加えると、麻痺症状が増悪することがありますので、マッサージを控えましょう。

後縦靭帯骨化症鍼灸治療のメカリズム

鍼灸(灸鍼灸)の外周神経への影響

鍼灸刺激では、周囲神経の痛覚神経の痛み信号の伝達を遮断することによって、脊髄の傷害性刺激信号に対しての反応を抑制します。

鍼灸の中枢神経への影響

鍼灸刺激では、痛み信号の伝達及び感受を抑制し、脳の鎮痛システムを興奮することによって、鎮痛効果を発揮します。

鍼灸の中枢神経の伝達物質への影響

鍼灸(針)刺激では、脳のエンドルフィンを増やし、脳のカテコールアミンは減らし、また、脳のモルヒネをも増やします。これらの総合作用によって、鎮痛効果が得られます。

後縦靭帯骨化症鍼灸治療効果

後縦靭帯骨化症16名、有効率65%。

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