味覚障害
味覚障害は味蕾、神経、脳のいずれかに障害が起き、味覚に異常が生じることです。
人間の味覚には甘味、酸味、塩味、苦味、甘味という5つの基本味があります。味覚障害の部位では、味覚の受容器である味蕾の障害が多いとされています。舌表面の細かいひだや舌の付け根付近の粘膜部分に存在し、口の中全体では約9000個あるといわれています。 味蕾の内側にさまざまな味に反応する味細胞があり、口に入った食品は、味蕾にある味覚受容器を刺激します。味覚受容器には味覚を感知する線毛があり、食品の分子はこの線毛を刺激して、近くにある神経線維に神経インパルスを起こさせます。この神経線維は、味覚をつかさどる脳神経(顔面神経と舌咽神経)につながっています。発生した信号は、脳神経に沿って脳へ進み、脳はその信号を翻訳して味として認識します。
最近「味のわからない人」(味覚障害)が増えています。味覚異常の訴えは女性に多く、年齢的には女性が40歳代、男性は50歳代から増加がみられます。原因として日常よくあるのは、かぜによる場合で、同時に嗅覚障害が起きることもあります。そのほかにはベル麻痺やハント症候群、中耳炎、聴神経腫瘍などで顔面神経麻痺に伴うもの、口蓋扁桃摘出手術や全身麻酔での喉頭ポリープ手術の手術後に起きる場合、中耳手術後や歯科麻酔治療などによる医原性による場合、糖尿病・肝炎・肝梗変・腎機能障害・甲状腺機能障害など全身疾患による場合、口内炎や口腔真菌症、自己免疫疾患のシェーグレン症候群、唾液分泌障害などの口腔内の局所に原因がある場合などもあります。米国立医学図書館(NLM)によると、味覚障害の原因には以下のようなものがあります。
味覚障害の原因は主なものとしては次が挙げられます。
味覚障害の場合、もっとも因果関係が明らかになっているのが亜鉛不足です。つねに新鮮な味覚を保つため、味細胞は10日あまりのサイクルで新しい細胞に生まれ変わっており、新陳代謝に必要な酵素をつくる際に亜鉛が必要となります。十分な量の亜鉛がないと酵素ははたらかず、そのため新しい細胞はつくられず、味蕾は機能しなくなります。 また、舌炎があるととくに障害されるのは塩味の味覚で、このとき酸味と混同しやすいといわれます。舌炎の原因には、ビタミンB群(B2、B6、B12)や亜鉛、鉄分の不足が関係しています。 味覚を正常に保っていくためには、味覚細胞は新陳代謝を繰り返しおこなう必要があります。この新陳代謝がうまくいかないと味覚障害を起こします。この新陳代謝に必要な酵素をつくりだすために必要なのが亜鉛です。成人の亜鉛の一日必要摂取量は15ミリグラムで、通常の食生活を送っていれば亜鉛欠乏は起こらないはずですが、日本人の亜鉛摂取量は一日平均9ミリグラム前後で、少ないそうです。原因の一つは「加工食品」にあります。加工食品に含まれている食品化合物の中には、生体内の亜鉛と結合して、体外へ排泄させるものがあります。もう一つ重要な原因として「薬」があります。薬の作用により亜鉛の吸収が妨げられたり、生体内の亜鉛が過剰に排泄されると考えられています。この作用を持つ薬には、血圧降下剤(メチルドパ、カプトプリル)・痛風治療薬(コルヒチン、アロプリノール)・抗生物質・動脈硬化治療剤・消化性潰瘍治療剤・解熱鎮痛剤・抗癌剤など多数あり、しかも病院の薬だけでなく、市販薬の中にもこの作用を持つ成分が含まれているものがあります。亜鉛欠乏による味覚障害は、一人暮らしの若い人と老人に多くみられるようです。若い人は、ダイエットで十分な栄養を摂らなかったり、外食に頼ることが多いためと思われますが、自覚症状が乏しい場合が多いため病院を受診するケースは稀です。老人もやはり食事が加工食品にたよってしまったり、長期間薬を飲んでいたりするためと年齢的に避けられない味覚細胞の減少によるものと思われます。健康な味覚を維持するために重要な事は、きちんとした食事を摂ることです。亜鉛の含有量の多い食品を日常的に取ることが重要です。抹茶、緑茶、玄米茶、ココア、魚介類では牡蠣(かき3〜4個、100gで亜鉛の一日必要量が摂取できるとされています)、かずのこ、いわしのみりん干し、煮干し、のり、たらばがに、さざえ、カシューナッツ、いりごまなどが奨められます。市販の補助栄養食品サプリメントで亜鉛を補充するのも良いでしょう。亜鉛不足になる原因でもっとも多いのは薬剤の副作用によるものです。常用しているくすりがある場合には疑ってみる必要があります。加工食品に含まれている食品化合物の中にも、同じように亜鉛を体外へ排泄させる作用をもつものがありますから、ふだんの食生活にも注意を向ける必要があります。
| 薬剤の分類 | 薬品例 |
| 利尿剤 | ラシックス,アルダクトンAなど |
| 降圧剤 | フルイトラン,ACE阻害薬,カルシウム拮抗剤など |
| 抗パーキンソン薬 | ドパストン,アーテン,コリンホールなど |
| 抗うつ剤 | ノリトレンなど |
| 精神安定剤,睡眠薬 | セルシン,コントール,セレナール,サイレース,ハルシオンなど |
| 自律神経系作用薬 | ?・?H`ト |
| 制吐剤 | プリンペラン |
| 鎮痛剤 | アスピリン,ポンタールなど |
| 抗癌剤 | フルオロウラシル,アドリアシン,MTX,フトラフール,ビンクリスチンなど |
| 抗結核剤 | イスコチン,エサンブトール,PAS |
| 肝疾患治療剤 | チオラ,タチオン |
| ステロイドホルモン | プレドニン |
| 免疫抑制剤 | イムラン |
| 抗甲状腺剤 | メルカゾール,プロパジールなど |
| 痛風治療薬 | ザイロリック |
| 糖尿病治療薬 | メレリル,グルデアーゼ |
| 抗生物質 | ビクシリン,ミノマイシン,バクタなど |
| 抗ヒスタミン剤 | ポララミン,ピレチア |
| 抗てんかん剤 | アレビアチン、テグレトール |
| 薬剤抗真菌剤 | ファンギゾン |
味覚異常といっても味物質に同じ程度で味覚が低下するわけではありません。味には甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5種類があります。塩味だけわかりにくいという症状はほかの味覚と比較検査してみる必要があるでしょう。濾紙ディスク法という検査によって、うま味を除いた4種類の味覚が検査できます。検査は4種類の味を含ませた直径5mmの濾紙片をもちいて、同じ味を、うすいレベルから濃いレベルまで5段階に分け、うすい味の濾紙片から順に舌の上に置き、どのレベルで味覚としてとらえられるかを検査します。また、電気味覚検査は舌に微弱な電流を流して金属性の味がするかどうかをみる検査で、味覚障害がある人はかなり電流を強くしないと感じることができません。これらの味覚検査を行うことにより、味覚障害の程度と場所がわかります。この味蕾は、口の中全体からのどの奥にかけて存在しており、味は口の中全体で感じるようになっています。味蕾細胞は生まれたときが最も多く、老人は1/2から1/3に減るといわれています。健康人でも年とともに味覚は鈍くなってゆきます。
味覚検査のほかにも、血液検査で味覚障害と関連するほかの病気がないかどうかを確認してください。血清亜鉛値や肝機能、腎機能、貧血の有無を調べることになります。肝機能障害があると亜鉛排泄量が増加し、消化管からの亜鉛吸収が抑制されて、血液中の亜鉛量が減少します。加齢やストレスによって唾液の分泌が低下して舌炎を引きおこし、味覚障害を誘発することもあります。舌の表面だけでなく、口の中全体をおおっている粘膜にとって適度な湿り気が不可欠です。味覚障害が長く続いているケースでは治りが悪いことが多いので、できるだけ早めに原因に関して診断と治療を受けましょう。
健常な味覚細胞が新しく再生するのには時間がかかりますから、いったん起こった味覚障害は治療を始めてから相当の月日を要すると考えて療養しないといけません。
味覚障害が長引くと治りにくいので早めに治療を受けましょう。
味覚障害鍼灸治療症例 :味覚障害の患者さん65名、取穴:金津、玉液、下関、迎香、風池、合穀、足三里。血清亜鉛値の低い方は亜鉛を補充する必要があります。薬物による味覚障害は、薬の変更を勧めます。その他、原因劇麻?`H要です。。
味覚障害鍼灸臨床経験 :一次性味覚障害と二次性味覚障害には、針灸の効果がかなり得られます。とくに原因不明な味覚障害には、薬物療法よりも針灸の効果が高いです。
味覚細胞の新陳代謝を促進し、味覚をつかさどる神経線維を刺激し、神経線維の働きを改善すると考えられます。
味覚障害の患者さん65名、完治したのは42名、有効率78%。