脊髄外傷(損傷)

脊髄が何らかの異常により、脊髄に圧力がかかり、正常な機能が障害されることを脊髄損傷と言います。
脊髄をゆっくりと圧迫する原因には、脊髄や脊椎の腫瘍、感染症、動静脈奇形、異常な骨の成長などがあります。さらに脊柱管が狭まる脊柱管狭窄は、脊髄を徐々に圧迫して痛みを起こします。外傷、癌(がん)、骨粗しょう症は、椎骨をつぶすことで、脊髄を圧迫します。この種類の椎骨骨折は圧迫骨折と呼ばれています。脊椎骨折の10〜20%に脊髄損傷を合併します。
正常な脊髄は脊椎に守られていますが、何らかの異常により脊髄に圧力がかかると、正常な機能が障害されます。脊髄が突然圧迫されると、症状は数分以内に現れたり、数時間から数日かけて徐々に現れ、数週間から数カ月以上かかって進行する場合もあります。
突然の圧迫は外傷によるものが多く、椎骨の骨折や脱臼を引き起こします。突然の圧迫は他に出血、感染症、膿瘍、椎間板破裂や椎間板ヘルニアなどでも起こります。
脊髄外傷は、その障害の部位(高さ)、大きさなどによって重症度や症状はさまざまです。原因についても頭部外傷と同様多種です。脊椎・髄膜・脊髄自体といった部位差や、開放性損傷、骨折、出血など性質の差も、症状・経過に関係しています。
脊椎の骨折やずれが起きた場合はその部分に激痛が起こります。実際にはX線撮影による初見が決め手になります。脊髄自体に損傷が起これば、その高さ以下のまひ、感覚の障害、排尿排便障害などが起こります。
脊髄外傷も脳の場合と同様に、外傷時のようす、症状・経過が重要です。X線単純撮影、脊髄腔造影撮影(ミエログラフィー)、CT、MRI、筋電図検査も状況により併用されます。
脊髄外傷を受けた場所から病院などへ移送するときは、損傷部および脊椎全体を動かさないように、頭とからだとを1本の棒のようにして平面上のもの(板やたんか)に乗せ、静かに運ぶことが大切です。その際、呼吸障害やショック治療など、人工呼吸や医師による治療が必要となることがあります。
自然の経過で回復をまつ間に、脊髄が浮腫を起こしたり、出血して血腫ができたりして脊髄が圧迫された場合には、腫瘍の手術と同様に、後方から脊椎の一部(椎弓)を切除して圧を下げる必要があります。
脊髄外傷は後遺症を残すことが多く、その場合はいわゆる“脊損”(脊髄損傷)の鍼治療を、根気よく続けることが、後遺症を克服する大切な方法です。
脊髄外傷の程度によって:完全型脊髄外傷と不完全型脊髄外傷に分類します。
外傷性脊椎損傷の大部分は脊髄損傷を併発しています。C1/2より上位の脊髄損傷「頚髄損傷」は、肋間筋、横隔膜筋の機能が停止し、呼吸麻痺と四肢麻痺を発症し、人口呼吸器、レスピレーターの絶対的適応となりますが、大半は死に至ります。
上位頚椎は、頭部と頚部の移行部に当り、周囲に脳・脊髄などの重要な役割を果たす神経・血管系が存在しているため、これらの損傷に伴い重篤な症状や致命的な損傷を引き起こす可能性が極めて高いです。
脊髄損傷の原因としては、外力による脊髄の振とう、圧迫、挫傷が考えられています。上位脊髄損傷で最も重篤な状態は、呼吸麻痺などです。
上位脊髄損傷の症状は、肋間筋及び横隔膜の運動不能による、自発呼吸の麻痺です。XP撮影、CTスキャン、脊髄造影、MRIで確定診断を行います。
第4頚髄以上の損傷で、完全麻痺の場合は肋間筋及び横隔膜の運動が不能となります。
つまり自発呼吸が出来なくなるのです。気管切開の上レスピレーター(人工呼吸器)の使用が必要となります。
上位頚椎損傷としては、環椎後頭関節脱臼、環椎前弓骨折、頚椎後弓骨折、環椎破裂骨折、歯突起骨折、環軸関節脱臼、軸椎椎体骨折、軸椎関節突起間骨折があります。
両上肢と両下肢、四肢の麻痺があらわれます。知覚の消失、運動麻痺、神経因性膀胱、閉尿、自律神経障害、腱反射異常、病的反射の出現等、様々な症状を示します。 受傷直後は、全身状態の管理、尿路管理、褥瘡、損傷脊椎に対する処置をします。急性期を脱したら、すぐ針治療を行ないましょう。
脊髄は特異的な構造をした組織なので、医師は症状と診察の結果に基づいて脊髄の損傷部位が特定できます。たとえば、腕でなく脚の筋力低下やしびれがあり、膀胱と腸の機能が阻害されている場合は、胸椎領域の損傷が考えられます。また脊椎に沿って痛みや圧痛がある部位からも、損傷部位を推定できます。
MRI検査や、CTを使った脊髄造影検査によって、脊髄の圧迫部位とその原因がわかります。椎骨の骨折や脱臼、椎間板破裂やヘルニア、異常な骨成長、出血、膿瘍、腫瘍などを発見できるからです。
圧迫の原因を特定でき次第、すぐに手術を行って脊髄の圧迫を緩和します。手術を急がなくていい場合や手術が不可能な場合には、針による生検を行って、原因を突き止めます。
穿刺針はCT画像を見ながら患部まで進められます。生検は、異常増殖病変や腫瘍が癌であるかの判定にも用いられます。
中枢神経損傷による重篤な機能障害を引き起こすばかりでなく、致命的な状況に陥る可能性があります。脊椎損傷は、初療時や移動・搬送時の不適切な処置により脊髄損傷を引き起こす可能性がありますので、神経症状が明らかでない場合でも、すべての高エネルギー外傷患者は脊椎・脊髄損傷が否定されるまで、これらが存在するものとして扱うべきです。損傷が明らかでない場合でも脊椎の固定は続行したまま画像診断
脊椎骨折の約45%が頸椎、約40%が胸椎で、発生します。 その分類は脊椎外傷、環椎骨折、椎弓根骨折があります。
脊髄の永久的な障害を防ぐためには、すぐに圧力を軽減しなければなりません。神経経路が破壊される前に圧迫部位を特定して治療が行われれば、通常は機能が完全に回復します。メチルプレドニゾロンやデキサメタゾンなどのステロイドを高用量で静脈注射すると、脊髄の内部や周囲の浮腫が抑えられます。浮腫は圧迫の一因となるため、これらの薬はできるだけ早く投与されます。しかし原因が外傷による場合は、8時間以内に投与すれば効果があります。手術不可能の場合には、腫瘍による圧迫を軽減するために放射線療法が行われます。血液、骨の断片、腫瘍、ヘルニアの起きた椎間板、異常な骨成長を取り除くには手術が必要です。また脊椎を固定する治療も必要になるでしょう。
前脊髄型損傷
後方型損傷
椎骨動脈損傷
脊髄ショック
典型例では損傷レベル以下のすべての機能が喪失します。受傷後数時間から48時間(ときに数週間)持続
交感神経支配が断たれる:血圧低下と徐脈、持続勃起症、肛門括約筋トーヌス低下、体温上昇(←熱放散障害)など
呼吸運動障害:C5レベル以下の麻痺では横隔膜機能の一部が残存し奇異呼吸
身体所見:明らかな感覚・運動障害がなければ局所の自発痛、圧痛、運動痛を診察
頸椎では自発的な運動のみを指示
胸腰椎では側臥位にして腰背部を軽く叩打疼痛の有無を確認
頸椎:側面、正面、開口位の3方向撮影
側面像:両手をクロスして上肢を下方に牽引し頭蓋骨からC7までを描出させる
Alignment:椎体前面ライン、椎体後面ライン、脊柱管後面ライン、棘突起ライン
Bone:個々の骨の輪郭
Cartilage:椎間板、椎間関節の距離
Distance of soft tissue:環椎と歯状突起前面間の距離 > 3mmで横靭帯損傷。咽頭後壁とC2〜C4前面の距離 > 7mmで異常。気管後壁とC6前縁の距離 > 22mmで異常。
開口位::上位頸椎骨折の診断に重要
意識障害、気管挿管で開口位撮影が困難な場合にはCT撮影を行う
胸腰椎:2方向。頸椎に骨折を認めた場合は胸腰椎X線も追加。
身体所見、単純X線で脊椎・脊髄損傷が疑われればCTやMRI撮影を行う
元々中心性脊髄損傷の学説は1954年に、当時の西ドイツのシュナイダー医学博士が、「頚髄損傷であれば下肢の麻痺も認められて当然であるのに、下肢には麻痺がほとんど認められず、解剖学的には上肢に行く神経線維は中心寄りに、下肢に行く神経線維は外側寄りに存在しますので、中心部に損傷が強ければ上肢の症状が重く、下肢の症状は軽くなるのです。 脊髄の辺縁部は周辺を取り囲む多くの血管によって栄養を受けていますが、中心部は中心動脈から枝分かれした毛細血管から栄養を受けています。このことからも脊髄の中心部は、損傷を受け易く、回復しにくいという特徴を示します。この症例は、変形性脊椎症や脊柱管狭窄症が基礎にある、中年以降の被害者に比較的軽微な受傷機転で発症することが多いのを特徴としています。上肢の症状が、下肢よりも強く出ます。具体的な症状としては、運動麻痺・痛み・ビリビリするような両手や手の痺れ等です。上肢の麻痺が主体の患者について死亡後解剖を行ったところ、脊髄の中心部の損傷が激しかった!」発見して学会に発表したのが始まりです。脊髄損傷の1つであるこの疾患の大きな特徴は、頚椎の骨折を伴わない、非骨傷性頚髄損傷であることです。
牽引などを用いて、頚椎を牽引し安静を保つ保存療法が中心となりますが、後期は鍼灸治療で、かなり神経機能の回復が期待できます。
脊髄の下端から伸びている神経の束は、馬の尻尾と形が似ているために馬尾神経と呼ばれています。馬尾神経が、椎間板の破裂やヘルニア、腫瘍、膿瘍、外傷による損傷、炎症による腫れ(たとえば強直性脊椎炎)などによって圧迫されたときに現れる症状を、馬尾症候群と呼びます。腰の痛みを感じるほか、尻、太もも、膀胱、直腸を含む部位の感覚が鈍くなります(自転車などのサドルに接触する部位であることから、サドル麻酔と呼ばれる)。このほか勃起機能不全(インポテンス)、夜間の尿失禁、足首の反射消失などの症状があります。圧迫が非常に強くなると、膀胱や腸の機能が失われます。馬尾症候群の患者はただちに治療が必要です。ときには圧迫を起こしている原因を手術で治療し、腫れを抑えるためにコルチコステロイドが投与されます。
脊髄は、小脳から頚椎、胸椎、腰椎のトンネルの中を走行しており、成人で約 44 cmの長さです。脊髄の圧迫が最小限なら、脊髄を行き来する神経信号の一部が阻害されるだけです。背中の局所的な不快感、軽い脱力、チクチク刺すような感覚の変化、勃起機能不全(インポテンス)などの症状が現れます。圧迫が強まるにしたがって、症状は悪化します。圧迫が重大なら、大半の神経信号が遮断され、重症の筋力低下、しびれ、尿失禁や尿閉、腸管コントロールの消失が起こります。すべての神経信号が止められてしまうと、麻痺が起きて完全に感覚が失われます。脊髄が圧迫されている神経レベルの位置には、ベルトのような帯状の不快感が生じます。予想は困難ですが、一度脊髄圧迫の症状が始まると、最も軽い状態から、数時間から数日の間に急速に悪化していきます。
事故等で脊髄の半側が障害されると(1)同側の運動麻痺(錐体路) (2)同側の深部感覚消失、 (3)反対側の温度覚と痛覚の消失が現れます。これは温度覚と痛覚は脊髄内ですぐに対側の伝導路に移り、脊髄内を上行しますが、深部感覚は同側を上行するからです。
脊髄脊椎管(背骨)の中にあります。脊髄の外側は白質と呼ばれ神経繊維からできており、この部分を通していろいろな情報が伝達されます。内側には灰白質と呼ばれる部位があり、神経細胞体からできています。白質はさらに腹側の前索、外側にある側索、および背側の後索に分けられます。一方、灰白質は腹側の前角、外側の側角、および背側の後角に分けられます。
前角にある神経細胞からは前根を通して遠心性(運動性)神経繊維が脊髄から出ていきます。逆に末梢からの感覚情報は後根という求心性(感覚性)神経繊維となって後角に入ります。この前根=遠心性(運動性)、後根=求心性(感覚性)というパターンをベル・マジャンディの法則(Bell-Magendie's law)といいます。後根には脊髄神経節と呼ばれるふくらみがあります。身体各部位からの感覚の情報は脊髄を通って脳へ伝えられます(上行性伝導路)。また体や手足を動かすための脳から筋肉への刺激は、脊髄を通して筋肉へ伝えられます(下行性伝導路)。このように脊髄は感覚情報や刺激伝達の経路として重要です。脊髄にはまた反射の中枢としての機能があります。
(A)情報、信号の伝導路としての機能
脊髄の白質には末梢から脳へ感覚情報等を伝達する上行性伝導路と脳から末梢へ運動常法等を伝える下行性伝導路があります。これらの伝導路には出発点ー目的地の順に名前が付けられています。たとえば脊髄小脳路は脊髄から小脳へ向かう上行性の伝導路です。
(B)反射中枢としての機能
たとえば、熱いものに手や足が触れるとそれを意識する前に手足を熱い物から遠ざけるような動きをします。このように何らかの刺激によって受容器が興奮し、 その興奮が、それを感じたり意識したりすることがなく効果器(筋肉)に至る現象を反射(Reflex)といいます。この反射の情報を処理する場所を反射中枢(Reflex center)といい、また反射の起こる経路を反射弓(Reflex arc)といいます。 反射には
があります。
脊髄外傷(損傷)鍼灸治療症例 :上位脊髄損傷では、取穴:夾脊穴、唖門、風府、大椎、天宗、風門、肺兪、後渓、曲池、合穀。下位脊髄損傷では、取穴:夾脊穴、風池、大椎、天宗、風門、肺兪、後渓、曲池、両側の腰眼、大腸兪、腎兪。
脊髄外傷(損傷)鍼灸臨床経験 :脊髄損傷の安定期に、なるべく早い段階で、鍼灸治療を開始しますと、脊髄の機能回復がよく、保存治療として優先的に選択すべきです。2年前、15歳の中国体操選手ナンバ1張 楡さんが練習中に事故となって、上位脊髄損傷になったが、早い段階で針灸治療を受け、回復し、現在も中国体操チームで、活躍しています。
損傷した脊髄の再生を促進しると考えられます。
脊髄損傷100名、8ヶ月治療後、完治したのは22名、著しくよくなったのは13名、有効率93%。