脊柱側彎症
脊柱側彎症は脊柱が左か右に曲がっている状態です。
脊柱側彎症は先天性脊柱側彎症、後天性側彎、特発性脊柱側彎症に分類されます。
先天性脊柱側彎症は先天性に椎骨の形態に異常があって曲がっているものをといいます。
腰椎椎間板ヘルニアのような疼痛性側彎、背筋力のバランスがくずれて起こるまひ性側彎などが、後天性側彎の代表的例です。
原因のはっきりしないものを特発性脊柱側彎症といいます。
構築性側彎症のうち発生原因がわかっていないものを特発性側彎症と呼んでいます。特発性側彎症は全脊椎側彎症の80%を占めていると言われており、発生率が高いという点で重要な側彎症です。学校検診で発見される側彎症も大部分は特発性側彎症であり、15度以上の側彎の発生率は、小学校高学年で約0.4%、中学校で約1.4%(女子では2.5%)です。
特発性側彎症は発見された年齢により、乳幼児期側彎症(0-3歳)、学童期側彎症(4-9歳)、思春期側彎症(10歳以後)の3つに分けられています。それぞれの頻度は、4%、12%、84%で、思春期側彎症が圧倒的に多くなっており、特に小学校高学年より中学校1、2年生の女子に多く見られます。
3歳以下で発見されたもので、多くの場合自然治癒する傾向がありますが、脊柱の回旋を強く伴っている場合には進行性で最終的には高度な彎曲を呈することも稀ではありません。アメリカに発生頻度が少なく、ヨーロッパに多いことから、乳児期の寝かせ方と無関係ではないことがわかっています。アメリカでは赤ちゃんをうつぶせ寝にするのが習慣ですが、ヨーロッパでは仰向けに寝かせています。仰向けに寝かせることが発生と関係していると言われています。仰向けに寝かせた場合、赤ちゃんは顔を左右どちらかを向けていますが、側彎が発生した場合には、彎曲の方向は右向きの赤ちゃんでは左凸であり、左向きの赤ちゃんでは右凸のことが多いことがわかっています。乳幼児期側彎症のことだけを考えれば、うつ伏せ寝が良いのですが、窒息の発生する可能性もあるのでうつ伏せにするときは御家族が常に監視していなければなりません。
胸椎右凸の側彎が多く、女子に発生率が高くなってきます。この年令ではお子さん本人の装具装着には抵抗が少なく、御家族の協力があれば装具治療がしっかりでき、進行を押さえることができますが、発見されたときすでに50-60度の彎曲がある場合には、装具治療にもかかわらず思春期を迎える頃に急激に進行することがあります。
特発性側彎症の多くを占め、ほとんどが女子に発生します。右凸の胸椎側彎が多く、背が急激に伸びる頃(生理開始の1-2年前から生理開始までの期間)に彎曲もまた急激に進行する場合があります。この年令では学校生活のさまざまな場面で肉体的にも精神的にも装具装着が困難なことが稀ではありません。
背骨が曲がり始めても通常は痛みがありません。また、彎曲がおよそ30度未満の場合には、脊柱の捻れや前後方向の正常の彎曲も比較的保たれているため、一見しただけでは異常がわかりにくいものです。こうした様々な理由により、側彎が初期の段階で発見されず、周囲の人が「姿勢が変だな」と気付いたときにはかなりの彎曲に進行していることも稀ではありません。
特発性側彎症も他の構築性側彎(本物の側彎症)と同様に脊柱が側方に曲がるだけで無く、側方に曲がっている部分は回旋(捻れ)をともなっているのが普通です。さらに脊柱の左右方向への彎曲と捻れが強くなると、脊柱の前後方向の彎曲が変化し、胸椎であれば背中の丸みが失われ、腰椎であれば腰骨の反りが無くなってきます。側彎症とは、脊柱の捻れ、側方への曲がり、そして前後方向の正常の彎曲が失われた状態ということができます。左右方向への彎曲が30度を超え、10度以上の捻れが生じてくるころには脊柱の前後方向の彎曲の異常がはっきりしてきます。側方への曲がりによって、肩の高さが異なったり、腋の下の左右非対称やウエスト部分の左右の高さの差が現れたり、肩甲骨の高さの差が出現します。脊柱の捻れが生じれば背部や腰部の左右のどちらかが突出してきますし、女子であれば前胸部の左右非対称が気になるはずです。このような状態に前後方向の彎曲の異常(背中や腰部のゆるやかな彎曲が減少した状態)が加わってくると一見して異常に気付くようになります。好きな服が着にくい、プールで水着になりたくない、など周囲の目が気になって精神的ストレスを引き起こす原因ともなります。
特発性側彎症は一度発生すると一般的に進行性です。特に身長の伸びの著しい時期、女子でいえば生理開始の1-2年前頃から生理開始まで(およそ10-13歳の間)に急激に進行します。乳幼児期側彎や学童期側彎の場合には、10歳くらいまでにかなりの彎曲が存在していますので、著しく成長する13歳頃までには相当の彎曲が形成される可能性があります。
骨成熟期(骨の成長が止まる時期)に彎曲が40度未満であれば、それ以後彎曲が増悪する可能性は低いのですが、50-60度以上の彎曲が形成されると骨成長が終了しても側彎は進行する傾向があります。脊柱の捻れが強くなり、胸椎と腰椎の前後方向の彎曲が消失してくると、肺臓、心臓などを収納している胸郭の容積が減少してゆきます。これはちょうど円筒状のものを捻ってみればその容積が小さくなってくることから理解できます。見かけがさらに悪くなる事もさることながら、肺臓、心臓などの重要臓器が長期間圧迫されるようになるのは好ましいことではありません。
また、腰椎の彎曲が強くなると、正常の人と比べると腰痛の発生率が高くなるといわれています。腰椎どうしを繋ぐ関節は前後方向の運動には適しているのですが、左右方向の動きは制限されています。腰椎が捩じれたり、左右に曲がってくると関節そのものに無理がかかってくるからです。
生まれながらに背骨に奇形がある場合で、正面からのレントゲンで四角であるはずの椎体が楔形であったり、片方がひっついていたりしている状態をいいます。先天性側彎がある場合には、心臓や腎臓の異常を伴う場合がありますのでこの方面の精査も必要です。
治療は、経過を観察した上で、彎曲が軽度で進行しないようであればそのまま経過を診てゆきます。曲がってくるようであれば装具治療を開始します。
脳性麻痺の患者さんや脊髄の問題で足が麻痺している方、また筋肉の力が低下している筋疾患の患者さんに側弯が生じてくる場合があります。この場合側彎の出現は多くは車椅子を中心に生活している10歳前後-10代前半にみられます。座位が安定している場合はよいのですが、バランスが悪くなり座位が不安定になってくる事が少なからずあります。10代前半に40度以上のカーブとなると大人になった後も弯曲が進行するという報告もあります。強いカーブへと進行して行くようであれば、患者さんの状態を見て手術が考慮されます。これは背骨が彎曲することによる心肺機能への悪影響を予防するためと(ライフセービングのため)、座って生活している人が座れなくなる、座りにくくなる、また杖などを使用して歩ける人がより歩きにくくなるなど、活動レベルに直接影響がでるため、ハンディキャップのある人にとってより不利益なことが増えてしまう事への打開策 (ライフクオリティーのため)としての意味があります。神経疾患、脊髄疾患、筋肉疾患、骨疾患のそれぞれ代表的なものを解説します。
生活の中心が、坐位もしくは臥位である場合は、約半数に30度以上の脊柱側彎が合併しています。通常彎曲は骨盤の左右の傾斜を伴う為、患者さんは姿勢保持が困難となり、日常生活は著しく制限されてきます。その多くは進行性であり、彎曲の程度が著しくなると、内臓に圧迫が加わり呼吸器系や消化系不全が起こって生命そのものまで脅かされる場合があります。
二分脊椎における脊柱変形は、先天性椎弓欠損部から髄膜・脊髄が体外に脱出し神経麻痺が生じた場合に発生しやすくなります。麻痺が胸椎レベルでは全例に、下位腰椎レベルでは約半数に側彎が発生します。側彎の原因は、1)高位麻痺レベルによる体幹筋力低下、2)水頭症による痙性片麻痺、3)脊柱の成長により癒着した脊髄が牽引を受けて発生する麻痺、4)二分脊椎に伴う脊椎奇形、などが原因と考えられています。側彎は骨盤の傾きを伴うことが多く、体幹バランスが崩れ、坐位が不安定になります。また坐位においては知覚麻痺がある両側の座骨部に均等に体重が加わらない為、同部に難治性の褥創ができやすくなります。さらに、股関節脱臼、膝関節拘縮、足部変形が合併する場合があるので患者さんの日常生活は著しく制限されるようになり、腹臥位での生活を余儀無くされることもあります。
進行性筋萎縮症における側彎は、患者が起立歩行困難となり坐位が生活の中心となると発症し急激に進行します。矢状面での変形は、極端な腰椎後彎と胸椎前彎です。椎体は強い回旋をともない、彎曲と同時に骨盤の左右方向への傾きが生じる為、バランスが崩れて坐位保持が困難となります。体幹の重みがすべて一方の坐骨結節にかかるために同部に痛みを生じ、坐位が妨げられて患者さんの日常生活は著しく制限されるようになります。この疾患においては体の中心にある大きな筋肉と比べ、末梢の筋肉は比較的遅くまで保たます。そのため患者さんは車椅子生活となっても手を使った作業は可能であることが多いのですが、坐位を保持するために上肢が使われてしまうので、手の機能が十分に発揮されなくなります。
重度骨形成不全症においては、易骨折性とともに著しい骨変形、筋力低下を伴っています。このため支持ならびに移動能力が奪われ、2歳を過ぎても支持歩行不可能な場合があります。脊椎骨も脆弱で、重症例では椎体変形が見られます。椎体変形のある場合は、脊柱全長にわたる特異的な側彎を生じます。また、脊柱矢状方向においては、ほとんどの例に胸椎前彎、胸腰椎移行部の後彎、腰椎(特に腰仙椎部)の高度前彎が見られます。脊柱側彎は早期に発生し、10歳前後急激に進行することが多いようです。重症例では肋骨脆弱の為、保存療法が困難です。
脊柱側彎症の鍼灸治療症例:脊柱側彎症99名、取穴:風池、風府、大椎、肩髃(けんぐ)、天宗、風門、肺兪、後渓、曲池、両側の腰眼、大腸兪、腎兪。電気針、20分間後、吸い玉20分間。 脊椎矯正手技で、彎曲した部分を矯正します。
脊柱側彎症の鍼灸臨床経験:先天性脊柱側彎症、後天性側彎、特発性脊柱側彎症には、鍼灸治療では、かなり有効で、手術以外の保存治療の中で、優先に選択すべきです。 側彎の矯正だけでなく、筋肉のバランスの回復、痛みの解除などにも効果的です。
脊柱側彎症99名、完治したのは22名、有効率82%。