高血圧症
![]() |
高血圧とは、動脈内の圧力が異常に高い状態のことです。
収縮期高血圧が140mmHg以上または拡張高血圧が90mmHg以上に保たれた状態が高血圧であるとされています。しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いほど合併症のリスクが高まる為、収縮期血圧で120mmHg未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされています。原因不明の高血圧は、本態性高血圧あるいは原発性高血圧と呼ばれています。高血圧の85〜90%は本態性高血圧です。本態性高血圧の原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝的素因が、生まれてから成長し、高齢化するまでの食事、ストレスなどの様々な環境因子によって修飾されて高血圧が発生するとされます。心臓と血管に生じたいくつかの変化が組み合わさって、血圧を上昇させると考えられます。たとえば、血管の収縮によって、血流にかかる抵抗が増加し、1分間に送り出される血液の量(心拍出量)が増えることがあります。全体の血液量も増加することがあります。このような変化が起こる原因はまだよくわかっていませんが、先天性の異常によって血圧を調節する細動脈の収縮が妨げられるためではないかと考えられています。
多くの人にとって高血圧という言葉は過度の緊張や神経質さ、ストレスを連想させます。医学用語での高血圧とは、その原因を問わず血圧の高い状態を示します。高血圧は、普通に生活していくのに必要な臓器が損傷を受けるまで、何年もの間、まったく症状が現れないことが多いことから、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。まったく治療していない高血圧は、脳卒中、動脈瘤(どうみゃくりゅう)、心不全、心臓発作(心筋梗塞)、腎障害などにかかるリスクを高めます。
| 分類 | 収縮期高血圧 | 拡張高血圧(mmHg) | |
| 至適血圧 | <120 | かつ | <80 |
| 正常血圧 | <130 | かつ | <85 |
| 正常高値血圧 | 130〜139 | または | 85〜89 |
| 軽症高血圧 | 140〜159 | または | 90〜99 |
| 中等症高血圧 | 160〜179 | または | 100〜109 |
| 重症高血圧 | ≧180 | または | ≧110 |
| 収縮期高血圧 | ≧140 | かつ | <90 |
血圧は、日常生活の中で自然にさまざまに変動します。乳児や小児の血圧は普通、大人よりもかなり低いです。米国などの先進国に住んでいるほとんどすべての人は、年をとるにつれて血圧が高くなります。収縮期血圧は少なくとも80歳まで、拡張期血圧は55〜60歳まで上昇し、その後、一定になるか下がることさえあります。しかし、開発途上国に住んでいる人では、年をとっても収縮期血圧も拡張期血圧も高くならず、高血圧の人はまずいません。これは、塩分(ナトリウム)の摂取量が少なく、運動量が多いためと考えられています。血圧を測る際には、2つの数値を記録します。高い方の数値は動脈内圧が最も高い状態を反映しており、それは心臓が収縮している収縮期に生じます。低い方の数値は動脈内圧が最も低い状態を反映しており、それは心臓が再び収縮し始める直前の拡張期に生じます。血圧は「収縮期血圧/拡張期血圧」という形式で表示します。たとえば、収縮期血圧が120mmHgで、拡張期血圧が80mmHgの場合は120/80mmHgと表示します。
血圧は運動によって一時的に変動します。運動時には血圧は上がり、安静時には下がります。血圧はまた、時間によっても変動し、朝が最も高く、夜寝ている間が最も低くなります。このような変動は体の正常な反応です。
原因の明らかな高血圧は、二次性高血圧と呼ばれます。高血圧の10〜15%は二次性高血圧です。腎臓は血圧の調節に重要な器官なので、多くの腎障害が高血圧を引き起こします。たとえば、腎臓が損傷すると、体から十分な塩分や水分を除去する能力が障害され、血液量と血圧が上昇します。高血圧の5〜10%は腎障害が原因です。こうした腎障害には、腎動脈狭窄症(片方の腎臓に血液を供給する動脈の狭窄)、腎炎、腎損傷などがあります。
高血圧の1〜2%は、内分泌障害や経口避妊薬などの特定の薬物の使用が原因で起こる二次性高血圧です。高血圧を引き起こす内分泌障害には、コルチゾールの血中濃度が上昇するクッシング症候群、甲状腺機能亢進症、副腎の1つの腫瘍(しゅよう)による場合が多いアルドステロンの産生過剰である高アルドステロン症、そしてまれに副腎の腫瘍で、エピネフリンとノルエピネフリンを産生する褐色細胞腫などがあります。
5000万人以上のアメリカ人が高血圧にかかっていると推定されます。高血圧はアフリカ系アメリカ人に最も多く、白人とメキシコ系アメリカ人の有病率が23%であるのに対し、アフリカ系アメリカ人では成人の32%となっています。また、高血圧の合併症が起こる割合もアフリカ系アメリカ人で多くなっています。高血圧は高齢者に多くみられ、20〜74歳では高血圧の人が約4分の1にすぎないのに対し、75歳以上では女性の約4分の3、男性の3分の2近くが高血圧にかかっています。肥満の人での有病率は、肥満ではない人の2倍となっています。
米国で高血圧と診断されているのは、実際に高血圧にかかっている人の3分の2だけと推定されています。これらの人々のうち、約75%が薬物療法を受けており、十分な治療を受けているのはそのうちの約45%です。
高血圧原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝素因に加えて、生後の成長過程、加齢プロセスにおける食事、ストレスなどの様々な生活習慣がモザイクのように複雑に絡みあって生じる病態(モザイク説)。高血圧患者の9割以上を占めます。
明らかな原因疾患があって生じる高血圧をいい、以下のような疾患が原因となる。頻度は少ないが手術などによって完治する確率が高いのでその診断は重要です。
大動脈狭窄症:先天性疾患です。
腎血管性高血圧:腎動脈の狭窄があり、血流量の減った腎でレニンの分泌が亢進することで起きます。
腎実質性高血圧:腎糸球体の障害により起こります。
原発性アルドステロン症:副腎皮質の腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるため起こります。
偽性アルドステロン症
Apparent Mineralocorticoid Excess症候群(AME症候群)
Liddle症候群.低カリウム血症.代謝性アルカローシス、を来す常染色体優性の遺伝性高血圧症。
クッシング症候群
褐色細胞腫大動脈炎症候群
血圧は重症度によって分類されます。これは高血圧の治療がある程度はその重症度に基づいて行われるためです。収縮期血圧と拡張期血圧が異なる血圧群にあてはまる場合は、高い方の血圧群に分類します。たとえば、160/92mmHgの場合は第2期高血圧、150/115mmHgの場合は第3期高血圧に分類されます。
心臓発作や心不全などの心血管系疾患や脳卒中のリスクを最低限に抑える最も理想的な血圧は、120/80mmHg未満です。
| 血圧群 | 収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧 (mmHg) |
拡張高血圧(mmHg) |
| 正常血圧 | 130未満 | 85未満 | 2年以内に血圧を再測定 |
| 正常高値 | 130〜139 | 85〜89 | 1年以内に血圧を再測定し、日常生活の改善に向けた指導を受ける |
| 第1期(軽症)高血圧 | 140〜159 | 90〜99 | 1カ月以内に高血圧かどうかを確認し、日常生活の改善に向けた指導を受ける |
| 第2期(中等症)高血圧 | 160〜179 | 100〜109 | 1カ月以内に医療機関を受診するか、治療を始める |
| 第3期(重症)高血圧 | 180以上 | 110以上 | 病状によってただちに、または1週間以内に医療機関を受診するか、治療を始める |
高血圧が持続すると強い圧力の血流は動脈の内膜にずり応力を加わると同時に血管内皮から血管収縮物質が分泌される事で、血管内皮が障害される。この修復過程で粥腫が形成され、動脈硬化の原因となる。高血圧によって生じる動脈硬化の結果、以下のような合併症が発生します。
高血圧と関連が深いのは脳出血、脳梗塞前2者です。脳出血は高血圧ともっとも関連するが、最近は降圧薬治療がうまく行われるようになった為、その頻度は減少してきています。一方脳梗塞の頻度は寧ろ増加し、その発症年齢も高齢化しています。脳卒中の結果として片麻痺、失語症、認知症など寝たきりの原因となりやすい後遺症を残す為、社会的、経済的観点からも高血圧の予防は極めて重要です。
高血圧が虚血性心疾患の重大な危険因子です、血管硬化によって心筋への血流が阻害され、心筋梗塞や狭心症という心筋障害をきたします。
とくに高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、肥満なども関与するとリスクが大きくなります。最近は腹部内蔵型肥満に合併した高血圧や高トリグリセライド血症、耐糖能異常などが冠動脈疾患のリスクであるとされ、メタボリック症候群として注目されています。
高血圧によって、腎臓の糸球体が傷害されます。糸球体は廃絶すると再生しない為、糸球体障害は残存糸球体への負荷を更に強める事となる。最終的には腎不全となり人工透析を受けなければならず、やはり社会的、経済的な負担は大きく、その進展予防は重要です。
高血圧性網膜症や、網膜動脈・網膜静脈の閉塞症、視神経症など様々な眼障害を合併します。
高血圧が持続すると心臓の仕事量が増えて、心筋が肥大してきます。肥大した心筋はさらに高血圧の負荷によって拡張し、最終的には心不全に陥ます。
胸部や腹部の大動脈の壁の一部が動脈硬化性変化によって薄くなり、膨隆した状態を大動脈瘤という。内径が5cm以上になると破裂する可能性が高くなるので、手術適応となります。また血管壁の中膜が裂けて、裂け目に血流が入り込み、大血管が膨隆する状態を解離性大動脈瘤といい、生命を脅かします。
主に下肢の動脈が、動脈硬化によって著しく狭小化するか、あるいは完全に閉塞した状態をいう。数十メートル歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると回復する場合には、この疾患を疑います。
上記のような慢性的な影響とは別に、急激な高血圧により脳圧が亢進し、頭痛、視力障害などの急性症状を引き起こした状態は高血圧緊急症、または高血圧脳症と呼ばれます。
血圧は、患者に座る、もしくは横になってもらい、5分ほどたってから測定します。特に、高齢者や糖尿病の患者の場合は、その後数分間立ったままでいた後、もう一度測定する必要があります。結果が140/90mmHg以上の場合、平均より高値と考えられますが、1回高い数値が出ても、それだけで高血圧と診断することはできません。数値が非常にばらつくなどの場合には、ときに数回高い数値が得られても、高血圧との診断を下すのに十分とはいえません。最初の測定で高い数値が出た場合は、少し時間をおいてもう1回測り、さらに少なくとも別の2日に、それぞれ2回ずつ測定し、血圧の高い状態が続いているかどうか確認します。
ほとんどが高齢者の場合ですが、動脈が非常に硬いと、血圧が本来の値より高めに出ることがあります。このような現象を仮性高血圧と呼びます。これは腕の動脈が硬すぎてカフで圧迫できないために起こり、血圧が正確に測定できません。
血圧は変動しやすいので、最近は家庭血圧計が普及しているが、家庭で自分自身で測定した血圧値の方が、診察室で医師や看護師によって測定した血圧値よりも将来の脳卒中や心筋梗塞の予測に有用であるとする疫学調査結果が相次いで報告されています。診察室での血圧測定では、白衣高血圧(医師による測定では本来の血圧より高くなる現象)や仮面高血圧が生じる為、必ずしも本来の血圧値を反映していないという考え方が普及しています。家庭での正常血圧値は診察室での血圧値よりもやや低い為に、家庭血圧では135//80mmHg以上を高血圧とします。家庭では朝食前に2回血圧を測定する事が望ましく、心筋梗塞や脳卒中の発症は朝起床後に多発する事から、早朝の高血圧管理が重要です。(早朝高血圧)脳卒中や心筋梗塞の発症には高血圧のみならず、喫煙、高脂血症、糖尿病、肥満などの他の危険因子も関与する為に、動脈硬化の診断や、腎機能、血圧反射機能などの自律神経機能等の診断も病態の把握に重要であり、動脈硬化の定量診断には脈波伝播速度計測なども行われています。血圧反射機能診断の為には、血圧変化に対する心拍反応や、欠陥の血圧反射機能を診断する方法論も提案されています。精密な病態の診断が最適な治療には不可欠です。
高血圧は、安静時の収縮期血圧が平均140mmHg以上か、安静時の拡張期血圧が平均90mmHg以上、あるいはその両方を満たす場合と定義されています。しかし、血圧が高くなれば、それが正常範囲内であっても、疾患としての危険性は増大するため、これらの境界値はやや恣意的なものです。この境界値は、血圧がこれらの数値を超えると合併症の危険性が高くなることから設定されました。高血圧ではほとんどの場合、収縮期血圧も拡張期血圧も高くなります。例外は高齢者で、一般的に拡張期血圧が正常かそれ以下の90mmHg未満であっても、収縮期血圧は140mmHg以上です。このような高血圧は孤立性収縮期高血圧と呼ばれています。
血圧が180/110mmHgを超えても何も症状がみられない場合は、高血圧急迫症です。
悪性高血圧はきわめて重症な高血圧で、高血圧緊張症とも呼ばれます。血圧は210/120mmHg以上になります。高血圧の人の約200人に1人しか発症しません。しかし、白人よりも黒人、女性よりも男性、富裕層よりも貧困層では数倍も多くみられます。高血圧急迫症と異なり、悪性高血圧はさまざまな重い症状を起こす場合があります。治療をしないと、悪性高血圧は普通、3〜6カ月で死亡します。
高血圧との診断がついた後、特に血管、心臓、脳、腎臓など、主要な臓器に対する高血圧の影響を評価します。高血圧の原因も調べます。臓器が損傷している個所を探したり、高血圧の原因を突き止めるために、患者ごとに多数の異なるタイプの検査が実施されます。一般的に、すべての高血圧患者に行われている検査は、病歴の聴取、診察、心電図検査(ECG)、血液検査(全血球数を含む)、尿検査などです。
網膜(眼球の後方の内表面上にある光を感じる膜)の検査には眼底鏡を使います。網膜は、医師が直接、高血圧が細動脈に与える影響を観察できる唯一の部位です。網膜の細動脈でみられる変化は、腎臓など、体の他のあらゆる部位の血管の変化と似ていると考えられています。網膜の損傷の程度を特定することで、医師は高血圧の重症度を分類することができます。
心音を聞くために聴診器を使用します。第4音と呼ばれる異常な心音は、高血圧によって心臓に生じる早期症状の1つです。この音は、肺を除く全身に血液を送り出す左心室が肥大して硬くなり、そこに血液を満たすために左心房が激しく収縮するために生じます。
著しい心肥大などの変化は心電図検査で検出できます。しかし、早期の段階では、このような変化は心臓超音波検査(心エコー)で最も正確に検出できます。
腎障害は尿検査と血液検査から検出できます。尿検査から腎障害の初期の徴候を検出できます。尿から血球とアルブミン(血液中に最も多く含まれるタンパク質)がみつかった場合、腎障害を示す可能性があります。傾眠、食欲不振、疲労感などの腎障害を示す症状は、腎機能の70〜80%が失われるまで普通は現れません。
高血圧の原因を特定できるのは全体の10%未満にすぎませんが、血圧が高い人ほど、また年齢が若い人ほど、原因の探索のためにさまざまな検査が行われます。その検査とは、腎臓および腎臓に血液を供給する血管に対するX線検査・超音波検査・核医学画像検査、胸部X線検査、エピネフリン・アルドステロン・コルチゾールなどの特定のホルモンを検出するための血液検査および尿検査などです。
診察での異常な所見や症状によって、原因を推定できる場合があります。たとえば、腎臓に血液を供給する動脈内の雑音は、腎動脈狭窄症を示す可能性があります。さまざまな症状が同時にみられる場合、褐色細胞腫が分泌したエピネフリンとノルエピネフリンというホルモンの血中濃度が高くなっている可能性があります。褐色細胞腫の存在は、これらのホルモンの代謝産物が尿中から検出されたときに確認されます。特定の検査を定期的に実施することで、高血圧の他のまれな原因が検出できることがあります。たとえば、血液中のカリウム濃度の測定は、高アルドステロン症の検出に役立ちます。
高血圧ではほとんどの人に何も症状がみられません。頭痛、鼻血、めまい、顔面の紅潮、疲労などの特定の症状が同時に生じると高血圧に関係があると広く考えられていますが、それは間違いです。これらの症状は高血圧の人にもみられますが、正常な血圧の人にも同じくらいの頻度でみられます。高血圧になっていても自覚症状が現れないことが多く、米国では「サイレントキラー(静かなる殺人者)」といわれています。しかも、現れる症状は不定愁訴といわれる他の病気でも見られる症状のため、高血圧症だからといって現れる特徴的な症状が少ないのです。
そういった中で、高血圧症で見られる症状には、脳障害からくる症状として頭重感、頭痛、めまい、耳鳴り、のぼせ、吐き気、嘔吐(おうと)などが見られます。さらに、高血圧症が高度になると手足の脱力感、しびれ、舌のもつれ、意識喪失、言語障害なども見られます。
また、心臓障害からくる症状として動悸、息切れ、脈の乱れなどが見られます。さらに、高血圧症が高度になると呼吸困難、手足のむくみ、白い泡沫状の痰を伴う咳などが見られます。
高血圧症が高度になると腎臓が障害を起こしてきますが、そのときに出る症状として手足のむくみ、目の障害として視力低下などがあります。
重症なまたは長期間続いている高血圧(特に悪性高血圧)を治療しないでいると、脳、眼、心臓、腎臓が障害され、症状が出てきます。症状は、頭痛、疲労感、吐き気、嘔吐、息切れ、不安感、視力障害などです。ときに、重度の高血圧では脳浮腫が生じ、吐き気、嘔吐、ひどい頭痛、傾眠、錯乱、けいれん、眠気、ついには昏睡(こんすい)さえも現れます。この状態は高血圧性脳症と呼ばれ、緊急の治療が必要です。
褐色細胞腫(副腎の腫瘍)による高血圧では、ひどい頭痛、不安感、速いあるいは不規則な拍動の自覚(動悸[どうき])、異常な発汗、ふるえ、蒼白などがみられます。これらの症状は、褐色細胞腫によって分泌されたエピネフリンとノルエピネフリンの血液中の濃度が高くなったために現れます。
動脈内の血圧が140/90mmHgを超えると、心臓が血液を送り出すのにより多くの労力を必要とするため、心臓は肥大し、心臓の壁は厚くなります。厚くなった心臓の壁は正常なときより硬くなり、結果として、心房や心室が正常に拡張できなくなり、血液を十分に取りこむことが困難になるため、心臓にかかる負担はさらに重くなります。このような心臓の変化によって、不整脈や心不全が生じます。
血液を運ぶ血管は、心臓から出たところが最も太く、だんだん細くなり、毛細血管という細胞に酸素と栄養素を運ぶ血管になります。
血圧は毛細血管まで血液を運ぶために、心臓から出たばかりのところでは120〜140mmHgもあります。この圧力は、水を1.6〜1.9mの高さまで吹き上げる力があります。
血圧はさまざまな要因で変化します。たとえば、運動、食事(含むコ−ヒーやお茶など)、興奮・緊張、喫煙、アルコール摂取、寒冷などでは血圧が高くなります。逆に、温暖、安静、リラックスなどは血圧を低下させます。そして、健康な人の血圧は、さまざな要因に対して適切になるように生体内で常にコントロールされています(血圧調節機構)。
この調節に関わっている主なメカニズムとしては、次のようなものがあげられます。
血管の壁には自律神経が通っています。自律神経は交感神経と副交感神経に分けられ、それぞれ血圧を収縮させたり、拡張させたりして血圧を調節しています。たとえば、興奮している状態では血圧が上昇してきますが、これは交感神経の興奮が高まるからです。さらに、頚(けい)動脈や大動脈の壁には圧を感じるセンサー(圧受容)があり、血圧が高くなる交感神経を鎮める信号が出され、血圧を元の状態に戻そうとします(圧反射血圧調節)。
上記の神経による調節以外に、血管を収縮させたり拡張させたりするホルモンがあります。これらの因子が多くなったり少なくなったりして血圧が調節されます。
血管に柔軟性をもたせている細胞を血管平滑筋といいますが、その筋自体が血流の増減に合わせて血管を収縮させたり、拡張させたりする機能を持っています。この血管平滑筋の収縮・拡張のメカニズムは、カルシウムとナトリウム、カリウムのイオン交換によって起こります。
体には血圧を調節するためのたくさんのしくみがあります。体は心臓が送り出す血液の量、動脈の内径、血流中の血液の量を変化させることができます。血圧を上昇させるため、心臓はより強く速く拍動して、より多量の血液を送り出すことができます。細動脈は縮んで狭くなり、拍動ごとに普通よりも狭い内腔に血液を通すことができます。動脈の内腔が狭くなるため、普通と同じ量の血液が通っても血圧は上昇します。静脈は収縮して静脈内の血液量を減らし、動脈内の血液量を増やすことができます。結果として血圧は上昇します。血液の容量を増やすために血流に体液を加えると血圧は上昇します。逆に、心臓が弱く遅く拍動したり、細動脈や静脈が拡張したり、血流から体液が失われれば、血圧は低下します。
これらのしくみを調節しているのは、無意識下に体内の代謝などを調節する神経系の一部、自律神経系の交感神経と腎臓です。何らかの脅威に対する体の生理的反応である「攻撃‐逃避反応」が起こると、交感神経はいくつかの方法で一時的に血圧を上昇させます。交感神経は副腎を刺激してエピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)というホルモンを放出させます。これらのホルモンは心臓を刺激して、拍動を速く強くさせ、ほとんどの細動脈を収縮させ、一部の細動脈を拡張させます。拡張する細動脈は、意識して動きを調節する骨格筋など、血液の供給量を増やす必要がある部位にあります。交感神経はまた、腎臓を刺激して塩分と水分の排出量を減らし、血液量を増やします。
腎臓も血圧の変化に直接的に反応します。血圧が上昇すると腎臓が塩分と水分の排出量を増やすので、血液量が減り、血圧は正常に戻ります。逆に血圧が低下すると、腎臓が塩分と水分の排出量を減らすため、血液量が増え、血圧は正常に戻ります。腎臓は、アンジオテンシンIIというホルモンの産生を引き起こすレニンという酵素を分泌して血圧を上昇させます。アンジオテンシンIIは、アルドステロンという、腎臓の塩分と水分の保持量を増加させる別のホルモンの放出を誘発することによって、細動脈を収縮させ、血圧を上昇させます。
たとえば、急激な運動や強い情動などの何らかの変化で血圧が一時的に上昇する際、普通は変化に拮抗し、血圧を正常な数値に保つために体の代償機構の1つが誘発されます。たとえば、心臓が送り出す血液量が増加して血圧が上昇すると、血管が拡張し、腎臓での塩分と水分の排出量が増えて血圧が低下します。
高血圧症鍼灸治療症例 :高血圧症患者さん15名、取穴:人迎、懸鐘、三陰交。電気針。
高血圧症鍼灸治療臨床経験 :高血圧症は生活習慣病の代表ということから、高血圧症の予防策は若年期からのよい生活習慣を確立する努力が大切です。以下のようなことに注意して生活をすることと、中年を過ぎた人は家庭で定期的に血圧を測定する習慣をつけることが大切です。
自律神経や血管を収縮させたり拡張させたりするホルモンに影響を与えると考えられます。
高血圧症患者さん15名、鍼灸治療する前の収縮期血圧が平均193mmHg、拡張期血圧が平均107mmHg、鍼灸治療する後の収縮期血圧が平均168mmHg、拡張期血圧が平均97mmHgでした。4名は鍼灸治療する前の収縮期血圧が平均190mmHg、拡張期血圧が平均107mmHg、鍼灸治療する後の収縮期血圧が123mmHgは、拡張期血圧が77mmHgでした。
有効率94%。