不眠症
不眠症には、痛みや尿意などが起こったり、からだや精神のいろいろな病気のためにほんとうに睡眠が十分とれていない場合と、ノイローゼ、不安神経症などのために眠れないと感じて問題にしている場合とがあります。ふつう年をとるにしたがって睡眠時間は短くなり、また眠りも浅く目覚めやすくなります。眠れないと感じている人も大部分は夜の寝つきがわるいという程度で、病的な睡眠不足ではないことが多いのです。海外旅行で時差のため生活のリズムが狂って眠れなくなることもあります。
病的な睡眠不足ではやせたり、食欲がなくなったり、頭がぼんやりしたりすることが多く、動脈硬化、高血圧症、糖尿病などの、からだの病気の結果眠れないという場合には、もとの病気に対する治療が必要です。前述のような病気がないかを、まず調べてもらうことが大切です。お茶やコーヒーなどの飲みすぎや、夜食の食べすぎなど寝つきをわるくする原因がないかよく反省してみましょう。
PTSD、統合失調症(精神分裂病)や躁うつ病などの精神病の始まりには、ただ不眠だけがおもな症状としてあらわれる場合があります。
眠りが浅くて夢ばかりみる、目が覚めても不快感が残る、わずかな睡眠で足りるのだが、しだいに疲れがたまってやつれてくる、などというようなうったえをします。このようなはっきりした不眠のあるときは、一応専門医の診察を受けることが必要でしょう。
無理に眠ろうとする努力はやめて、ただ横になっているだけでもよいと考えるようにするなど、精神的治療が大切で、必要なら精神科医に相談するのがよいと思います。
慢性的に続く不眠症には、環境の変化やストレス、病気などさまざまな原因がありますが、どの原因にも当てはまらないのに不眠の症状がある場合を「原発性不眠症」といいます。
アメリカ精神医学会が発行している「精神障害の診断と統計マニュアルIV」では、原発性不眠症(他に原因となる病気がない不眠症)を以下のように定義しています。
「不眠の症状が慢性的に続いているか」「不眠によってQOL(生活の質)が低下しているか」「他の病気が原因による不眠でないか」という3点が揃っているか否かがポイントになります。
不眠の原因には5つのPが関わっているとされています。眠れないと感じたら、これら5つのPについて、チェックしてみる必要があります。
・身体の不調(Physical)
痛みやかゆみなど、体の不調による不眠。
不眠を引き起こす身体の不調の代表的なものは、睡眠中に突然、数秒〜数十秒呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」や、足がかゆくなったりほてったりするなどの不快感が生じる「むずむず脚症候群」、睡眠中に足が痙攣する「周期性四肢運動障害」などが挙げられます。
いずれも、原因となる病気を治療することで不眠の解消につながります。
・生理的な問題(Physiological)
環境の変化などが原因の不眠。
生理的な問題とは、例えば旅行で枕が変わって眠れないなど、騒音や暑すぎ・寒すぎ、明るさ、入眠の時間など睡眠環境による不眠です。また夜更かしが慢性化し、生体リズムがずれてしまっても不眠を引き起こします。
・心理的な問題(Psychological)
精神的ストレスが原因の不眠。
心理的な問題とは、精神的ストレスが主なものです。人間誰しも悩みや不安、緊張で眠れないといった経験があると思います。「眠ろうと思えば思うほど目がさえてくる」といった状態も、この心理的問題に当たります。
・うつ病など精神的な病気による不眠。
心の病気については、うつと不眠とは密接な関わりがあると考えられています。うつの前触れとしてストレス性の不眠があるといわれていますし、高齢者において不眠はうつの危険因子とされています。
この場合も、「身体の不調(Physical)」と同じように原因となっている病気の治療をあわせて行います。
・不眠の・薬の副作用(Pharmacological)
服薬やコーヒーなどのカフェインによる不眠
不眠症の診断は問診が中心となりますが、必要に応じて病院に1泊し、脳波検査と筋電図や眼電図(目の動きを調べる)などの検査を組み合わせた終夜睡眠ポリグラフ検査を行うこともあります。この検査により、睡眠の病態が解明されました。
原発性不眠症では、上記のような原因が見いだせないのに、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒がみられます。
| 終夜睡眠ポリグラフ検査で明らかになった睡眠の病気 | |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 呼吸停止がくり返しみられる。 |
| 周期性四肢運動障害 | 四肢のぴくつき・けいれん(不随運動)がくり返しみられる。 |
| むずむず脚症候群 | 床の上で脚に異常な感覚があり、じっとしていることができない。 |
| レム睡眠行動障害 | 夢を見てうなされ、寝ぼける。寝ぼけて目覚める。 |
不眠とは反対に、眠りが深すぎたり、眠りが長かったりする人がいます。若いときには夜更かしして朝起きることが苦痛になりやすいものですが、強く起こせば、はっきり目が覚めるような眠りなら心配ありません。
しかし、どんなに刺激してもはっきり目を覚まさないときは、意識の障害からくる昏睡[こんすい]や睡眠薬による急性中毒、脳炎などを注意しなければなりません。
不眠症の鍼灸治療症例:不眠症患者99名、取穴:内関、血海、三陰交、足三里、百会、翳明、中脘、中極、神門。電気針、50分。耳置針:皮質下、神門、心、腎。寝る前、耳の置針を刺激。
不眠症の鍼灸臨床経験:不眠症の場合、対症療法として、鍼灸はかなり効果がありますが、不眠症の原因治療が必要です。
不眠症患者の睡眠物質の分泌量を増加すると考えられます。脊髄空洞症患者の治療中に、翳明を継続中程度の刺激をする、患者が睡眠状態におちます。刺激の強さを換えると目が覚めます。
不眠症患者99名、有効率は95%。
出典:財団法人健康体力づくり事業財団
平成8年度 健康づくりに関する意識調査報告書より